リーダーは名誉と栄光を得ようと決断をしがちである。これを抑制するのは利害得失の数値的な判断である。よい企業経営を持続させるにはこれらの使い分けが欠かせないと筆者は説く。

脱原子力依存の議論の行方は

原子力発電への依存度をめぐる政府主催の公聴会で東北電力の社員が意見を表明したことに対して一部の参加者から「やらせ」だという批判が出たために、今後の公聴会では電力会社の幹部や従業員による意見表明は行わせないという方針を政府が決定した。表明された意見の内容に対する批判ではなく、意見表明そのものを否定するものだ。

この出来事を聞いて思い出したのは、経済学者のハーシュマンの著書『情念の政治経済学』(法政大学出版局)である。ずいぶん昔に読んだ本である。英語のタイトルは『Passions and the Interests』(『パッションとインタレスト』)である。パッションを情念と訳すのは否定的な意味を強調しすぎかもしれない。本文中では「名誉と栄光を得ようとする努力」という言い換えが行われている。情念という言葉より情熱という言葉のほうがよいかもしれない。小論では、パッションというカタカナ言葉を使うことにしよう。このパッションは国民から大きなエネルギーを引き出すこともあれば、深刻な災禍をもたらすこともある。このパッションを制御する役割を演じるのが、インタレスト(利害得失)を冷静に考えようとする精神である。