台湾の鴻海グループがシャープへの出資比率の引き上げを打診している。これはエレクトロニクス産業におけるサプライチェーンの大きな変化のきっかけになると筆者は説く。

頼れなくなった銀行の支援

シャープが台湾のEMS大手、鴻海(ホンハイ)グループからの出資を受け入れることになったというニュースが多くの人々の注目を集めている。シャープがホンハイの傘下に入ったというセンセーショナルな報道もあるが、私はそうではないと見ている。20%という出資比率はかなりの影響力を持つが、支配権を確実にするほどの比率ではないという微妙な比率である。シャープはなぜホンハイの出資を受け入れたのか、また、ホンハイはなぜシャープへの出資を決めたのか。21世紀に入ってからの日本における事業再編の方法と、EMS業界の構造変化という視点からこの決定が持つ意味を考えてみよう。