危機感をあらわにするメルツ首相

複数のメディアが報じたところによると、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は連立政権を組む3つの政党に所属する連邦議会(下院)議員に宛てた年頭の書簡の中で、いくつかの産業が“瀕死(sehr kritisch)”の状態にあるとの危機感をあらわにし、ドイツ経済の活性化に向けて連立与党が一丸となって取り組むよう要請をしたとのことだ。

2026年1月7日、ベルリンの首相官邸で、フリードリッヒ・メルツ首相が閣議に出席するため到着し、閣僚たちに挨拶している。
写真=John MACDOUGALL/AFP/時事通信フォト
2026年1月7日、ベルリンの首相官邸で、フリードリッヒ・メルツ首相が閣議に出席するため到着し、閣僚たちに挨拶している。

メルツ首相は、特にエネルギーコストと労働コストの急増を問題視している。いずれのコストも、前任のオラフ・ショルツ政権下で膨らんだものだ。エネルギーコストは、ロシアから化石燃料、特に天然ガスの供給が途絶える中、割高な液化天然ガス(LNG)の調達を増やすとともに、原発の停止と再エネの整備を優先したことで膨らんだ。

一方、労働コストは、最低賃金の大幅な引き上げなど、高インフレの渦中でメルツ政権が分配政策を強化したことで膨らんだ。こうしたコスト高の問題は、輸出競争力の低下をもたらし、製造業を蝕んだ。加えて、米国でドナルド・トランプ大統領が再登板したことにより、いわゆる“ドル不安”が生じ、その受け皿としてユーロが買われた。

【図表】EU主要国の製造業生産
(注)3カ月後方移動平均   (出所)ユーロスタット

ドイツの「一人負け」

さらにトランプ大統領は、関税を大きく引き上げた。今年に入ると、その影響が本格化することになる。内部環境ならびに外部環境の両面で、ドイツの製造業を取り巻く環境は厳しさを増している。それを改善していくためには、政治が打って一丸となって対応しなければならないというのが、メルツ首相のメッセージのエッセンスのようだ。