スマートフォン、タブレット端末が普及するなど、情報革命が進んでいる。ビジネスでは「プロセスの見える化」が可能となり、そのプロセス自体を改善・解決することが今、企業に求められていると筆者は説く。

電子化が進む大学の最新教育事情

情報革命というといささか陳腐な言い方になるが、そうした大きいうねりが私たちの生活の真っ只中で進行している。電車の中で、老若男女、ほとんどの人が何かしら携帯する電子媒体をいじっている。若い人に限ると、スマホを使う人が圧倒的だ。

身近に電子媒体を置いて生活するスタイルは、アメリカではもっと進んでいるようだ。ホテルのレストランなどで、タブレット端末で新聞を読む外国人によく出会う。彼らは、その種の端末で新聞や雑誌を読むのに抵抗はないようだ。アメリカの大学教育事情を聞くと、学生が大学に進学するうえで、パソコンとタブロイド端末とスマホは不可欠の持ち物らしい。大学での教材が電子化し、学生たちは、そうしたメディアにダウンロードし、それで学習する。

海外の大学事情に比べると、日本の大学は日本語の制約があってまだまだ教材の電子化は進んでいないが、それでも少しずつ進み始めている。私の大学でも、英語など特定の科目では新しいシステムを導入している。「流科の英語・英語の流科」をスローガンに、英語教材を電子化し、新しいシステムを使って提供している。学生は、インターネットに接続されたPCがあれば、学内外を問わず、いつでも、どこでも学習ができる。わからないところが出てくれば、PCを通じて疑問や質問を出すこともできる。学習する学生のあいだでの交流も可能だ。

このシステムにメリットがあるのは、学生側ばかりではない。学生の学習プロセスを把握できるという点で、教える側のメリットも大きい。たとえば、学生Aクンがその教材を、いつどこで開いたかを把握できる。で、Aクンが、自宅での自習時間を含め、どれくらいの時間、どの章・ページ部分をPCを開いて学習したかがわかる。

そうした学生たちが、どこの個所をどれくらいの時間勉強したかという学習記録が手に入ると、教育プロセスを改善できる。どこの章の、どのような課題で学生の理解がストップするかといった「学習のハードル」が見える。それが見えると、学生たちがそれを克服するために、教材のどこを改善しなければならないか、学習するときにどこに注意すべきか事前に伝えることができる。

あるいは、学生の学習記録を集計すれば、学習上のさまざまな条件が成績アップに、どう関係するのかも見極めることができる。勉強量が増えれば、当然成績は上がるはずだが、その上がり方は、学習者が置かれている条件によって異なる。そこが見定められると、学習効果アップのために打つ手も条件に合わせて多様なものとなる。

これまで、大学教育では、もっぱら期末テストや授業出席数などで、教育・学習の成果や効果が測定されていた。途中に何回か宿題・課題を入れてもう少し緻密に測定することもある。最近では、学生からの授業評価が当たり前になってきて、学生たちから当該の授業のためにどれくらい時間を使って勉強したのかを自己申告させたりもできる。成果・効果を測定するためにいろいろな工夫が生まれているが、それでも隔靴掻痒の感は拭えない。学生の実際の学習プロセスを把握することはできない。だが、英語科目で導入されたこの新システムだと、学生の学習プロセスが見える化する!

それが画期的なのは、学習結果を見て学習の改善・解決を図るのではなく、学習プロセスそれ自体を、いわばリアルタイムで把握しながら、その改善・解決を図ることができる点にある。

一般に、こうした英語学習を含め、日常のさまざまな経験プロセスを直接把握することで、そのプロセス自体の改善を目指すこの新しいやり方を、「プロセス・ソリューション」と呼ぶことができる。