ビジネススクール(経営学の専門職大学院)では企業の具体的なケースを教材にして討議するケースメソッドが用いられている。この教育スタイルの普及によって研究面では3つの変化があったと筆者は説く。
医者・市会議員も!ビジネススクールの今
1990年前後から、ビジネススクール(経営学の専門職大学院)は、大都市を中心に開校数が増えてきた。その数は定義しだいで若干違うが、現在では30校を超えるスクールが活発に活動するに至っているようだ。
私も、神戸大学の経営学部で、社会人大学院という名前だったが、そのビジネススクールを開設するに伴い、89年に神戸大学に移り開校以来の一部始終を経験した。89年当初は、社会人大学院に自分から希望してやってくる奇特な学生はおらず、企業にお願いして社員のなかから若手を派遣してもらっていた。大学院担当の先生方は、会社回りをして、学生募集の協力を求めた。会社としても、有望な若手社員を、2年間休職扱いにして大学院に通わせるのだから、よほど余裕のある大会社にしかできない。当時、景気は良かったのだが、それでも住友銀行(現・三井住友銀行)とか日本生命、サントリー、ダイエーといった理解のある企業は限られていた。それら企業の協力の下、大学院のゼミを一つ余分に開講するというくらいの規模でスタートした。
大きく変わったのは、10年ほど経って、平日昼開講をやめ、土日・夜開講に切り替えたときからである。「誰でも学ぶことができるビジネススクール」を目指した。そのときから会社派遣の学生は激減し、自費で自分の時間をひねり出す、意欲のある実務家が来るようになった。東京や広島、岡山から、ビジネスパーソンばかりでなく、医者や歯医者、さらには市会議員まで、経営学の勉強に神戸六甲の山腹にあるキャンパスに夜あるいは土日に駆けつけてきた。