「商人不要論」は幾度となく唱えられる。商人は「取引数最小化の原理」から市場の効率を上げるだけの存在として説明される場合が多い。だが彼らはより重要な仕事を担っていると筆者は説く。

なぜ世の中に商人が存在するのか

テレビの時代劇を時々見る。それも、遠山の金さんや大岡越前など、何年も前に放映が終わった類の時代劇を見てしまうこともある。そうした時代劇は勧善懲悪のストーリーで、その悪役には、役人とそれと結託する商人がよく登場する。商品を独占し販売制限をして大儲けして、その分け前を役人に渡すという構図だ。一所懸命モノを作っておればまだしも、農民が苦労して作った産物を、単に右から左に流すだけで大儲けするとなると、あくどさたっぷりだ。この構図は単純すぎるとしても、「商人とは、一所懸命生産する奴の上前をはねて、何もしないで自分だけ得をする」というイメージに、時代劇を見る多くの人はつい納得してしまう。

そこから、商人不要論はすぐそこだ。供給者と需要家が直接取引すれば両者にとって一番いいはずなのに、その間にわざわざ入ってきて口銭だけをとっていくのが商人。彼を排除すれば、もっと理に合った世界になるはずだというわけだ。