国税局の職員はどのようにして脱税を見抜いているのか。税理士で、元東京国税局職員の佐藤弘幸さんは「私が所属していた『コメ』と呼ばれる東京国税局の資料調査課では、所得の申告状況だけでなく、国税の基幹データベースなども参考にしている。ただ、意外なところに脱税を見抜くキッカケがあることも少なくない」という――。(第2回)

※本稿は、佐藤弘幸『国税最強の精鋭部隊「コメ」』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

手錠とお金
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こうして「ターゲット」は選ばれる

コメが対象とする案件についてまず前提としてあるのは、増差(追徴対象所得)が1億円以上であることだ。そしてハッキリ言うが、コメの調査案件は「作られる」ということである。調査の数カ月も前から狙われているのである。行動記録、SNSなどへのアップも……。

作られるというのは冤罪えんざいという意味ではなく、申告書などの資料をもとに追徴できるような事件を企画するのである。こういう手法で脱税しているだろうというストーリーを組み立て、それに合わせて動員する人員、調査箇所などの陣容を決めるのである。

税務署では、クロでなくても定点観測、巡回接触という意味合いで3~5年に一度、同じ会社を調査することもあるが、コメは実際に調査を行う必要がある案件しか調査しない。すなわち、追徴できそうな案件である。

規模の大きな案件になると、企画書は50ページ以上にも及ぶことがある。企画書には調査対象者の概要、過去の接触状況、財務諸表分析、不正計算の想定、関係者一覧と申告状況などが記載される。コメの調査選定は、緊急発生の事案以外は年に一度、東京国税局管内84税務署を巡回して行われる。

巡回時に各種情報や申告実績から「粗選定」したものを所轄する税務署の幹部の意見を聞きつつ決定する。事業規模、営業拠点、調査箇所の多寡、調査対象者が悪質なケースなど、どうしても所轄署だけでは手に負えない事案があるので、書類だけではわからない事情を直接聴取する必要があるからだ。

何百件と情報を集め、コメで調査をする可能性のある案件に関しては、税務署に対して調査しないよう伝える。そうして、次事務年度(事務年度は7月から6月)のターゲットになりそうなものを探すのだ。