国税局の職員はどのようにして脱税を見抜いているのか。税理士で、元東京国税局職員の佐藤弘幸さんは「国税局の職員にもさまざま仕事があるが、繁華街を担当する『ハンカ』と呼ばれる部署では、夕方から朝方までキャバクラや風俗などを調査していた。特に風俗店は脱税を見抜くのが難しいが、閉店後のとある動きを追うことで実態を掴むことができる」という――。

※本稿は、佐藤弘幸『国税最強の精鋭部隊「コメ」』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

歌舞伎町
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“夜の街”を担当する「ハンカ」

さまざまな手法で脱税に関する情報を収集している国税局のなかで、もっとも情報収集能力の最も高いセクションが、課税部にある資料調査課、すなわち「コメ」だ。

コメの現場が過酷なゆえに、配属される職員も税務署のなかでとりわけハードワークを強いられる特別管理部門(トクチョウ、税務署のなかで不正計算が想定される事案を担当)や繁華街・特定地域担当部門(ハンカ・トクチ、風俗などの現金商売担当)といった部署から這い上がるケースが多い。

悪質事案の経験を積み、無予告調査に必要な機動力や洞察力に長けている者を即戦力として吸い上げているのだ。

「ハンカ」は私も経験があるが、新宿、渋谷、銀座、新橋、横浜などの歓楽街を管轄する8つの税務署にのみ設置されている。飲食店や風俗店をターゲットとし、全件無予告で臨場する。無予告なので、当然、トラブルがつきものだ。

コメの場合、国税局という看板があるので相手もしぶしぶではあっても折れやすいが、税務署となると、なめてかかられることも少なくない。入り口で揉めることが多く、それが調査官にとってはストレスになる。私の相方は、調査着手前に頻繁ひんぱんに下痢を起こしていた。

調査を受ける側と同じように、調査をする側も極度の緊張を強いられるのが無予告調査なのだ。