これまで日本では現場主義によるボトムアップ方式、アメリカではトップダウンによる上意下達の組織イメージが強かった。ところが、この3年間を調査した結果こうしたリーダー像に異変が起きているという。
リーダーのタイプが日米で逆転した理由
筆者は現在、米国をベースにして、北南米の日本企業の組織人事に関わる経営コンサルティングを行っている。米国型と日本型マネジメントの双方を見つめながら、人材マネジメントを通じていかに日本企業がグローバルでの競争力を強められるのか、を考える毎日である。ここでは、日米企業のマネジメントスタイルの逆転ともいえる変化が競争力にどのような影響を与えるのかについて考えてみたい。
人材マネジメントを考えるとき、日本型と米国型のマネジメントがよく比較される。その際、年功序列、終身雇用、企業別組合における労使関係などは、日本型マネジメントの根底にある要素としてよく挙げられる。一方、成果主義は米国型の典型のように扱われる。今では評価主義の評価も賛否両論で、成果を重視することは経営判断として揺るぎないものの、これをいかに日本の労働慣行に合ったものにしていくかという運営レベルの議論が交わされるようになった。
日本だけが海外のベストプラクティスを取り入れようとしているのかといえば、そんなことはない。米国でも特に1980年代に日本型マネジメントの特徴が様々な方面で研究され、その長所を導入しようとする動きがあった。
ヘイ・コンサルティング・グループで、全世界に広がるデータサンプルを基に、日本と北米のマネジャーに見られるマネジメントスタイルについて、過去3年程度の傾向を比較したデータがある(図参照)。
日本では、「強制型」と呼ばれる、明確な指示と細かい進捗確認を通じて、指示通りに仕事を進めさせるスタイルが多い。一方北米では、「ビジョン型」「関係重視型」「参加型」「育成型」の4要素をバランスよく兼ね備えたリーダーが多いという結果が得られた。これらを統合したリーダー像とは、ビジョンを明確に示し、情緒的な関係にも配慮しながら、部下に合わせた指導やフィードバックを通じて部下を成長させるスタイルである。
以前は、米国型といえばトップダウンで上意下達の組織イメージが強く、逆に、日本型といえば現場主義のボトムアップを重視するイメージがあった。前述のデータは、それぞれの特徴が逆転したかのような印象を与える。
従来の米国の「強制型」リーダーの傾向は、ここ数年で大きな変化を示している。これは、権力を振るうだけのマネジメントに頼らないリーダーシップを目指して試行錯誤が繰り返されてきたことを示している。