仕事を分解し、一つひとつ丁寧に教えていく。一見面倒で非効率に見えるかもしれない。しかしその方法が、新人育成で大きな効果を挙げている。作業分解から指示の出し方、見守り方まですべてを紹介する。
若手は上司の背中を見ても育たない
2007年問題や景気の回復を背景に各企業が若手人材の採用に積極的だ。採用バブルといわれる今、現場レベルでの新人育成力が問われている。しかし、現場の必死の努力にもかかわらず、結果的に「人が増えたけれども、生産性が上がっていない」と悲鳴を上げている企業も多い。
新人教育に四苦八苦している企業に対して、私は、仕事を分解して一つひとつの作業まで教え込む「徹底的に作業に着目した部下指導(以降、『作業OJT』)」をおすすめしている。これは効率的かつスピーディーに、そして確実に仕事を覚えさせることができる手法だ。
それでは以下に、新人教育について悩む各企業の現状と、「作業OJT」の具体的な方法、そしてその効果を示していこう。
各企業とも、新人育成は現場の直属の上司や先輩にあたる社員に一任している。一般的に、入社3年目から5年目の社員に任せるケースが大半だ。
これは単なる慣習ではなく、OJTには、新人育成のみならず、それを通じた「次世代リーダーの育成」という目的もあるからだ。
しかし、彼ら「OJTトレーナー」は、自分の仕事を上手にこなす力は培われているが、部下および後輩など新人の育成経験やスキルに乏しい。自分の仕事のうち任せられそうなものを場当たり的に振ったり、忙しさにまぎれて新人本人の自発的な学習に任せっきりになっているのが実情だ。これでは必要な技術や知識、ノウハウがなかなか身に付かない。
プレーヤーとして優秀でもマネジャーになりきれない人材も多い。