新人が仕事を習得したら自分は次のステップへ
右図のようにOJT期間中、トレーナーのパフォーマンスが1時的に落ちてしまうのは、当然のリスクだ。しかし、これをいかに早い段階で上げていくかが重要だ。例えば営業マンであれば、注文書や見積書作成、打ち合わせ議事録の作成等の仕事は部下に教えて任せ、自分は顧客の年間計画や予算をキャッチしにいくといった、もう一段上の仕事にシフトしていくのである。
この考え方は、現在部下を持つマネジャー層の育成のみならず、係長から課長、課長から部長など、各昇進の際にも応用可能なベースとなる。
さらに、間接的にはリテンション(社員定着・離職防止)効果も期待される。企業において、OJTを任せる年次である入社3年目から5年目の社員というのは離職率が高い層でもある。
人の入れ替わりが激しい昨今、いかに新人を育成し、定着させるかという問題に頭を悩ませている企業は多い。
どのような職種であれ、一定期間が経過すると仕事が単調になってくるだけでなく、投じているエネルギーに対してリターンが少ないという意識が芽生える。
このような社員には、OJTトレーナーを任せ、「次世代のリーダーとして期待をかけ、その資質を見ている」ということを明示すればモチベーションを維持することができる。
成果主義を導入している企業では、部下に追い越される恐怖から自分の手の内は見せたくないという上司もいる。しかし、個人のパフォーマンスが評価されるのは若い年次だけである。それ以降は、チームの目標に対する到達率を見られる。評価される対象は、個人の成果ではなく、チームパフォーマンスである。そう考えると自分のノウハウを隠すことの価値は薄い。
実質的な「作業」に着目するOJTは、新人育成のみならず「上司力を鍛える」ものでもある。これを実践することで、社員の能力の全体的な底上げが図れるだろう。