的確な指示で分解した仕事を叩き込んでいく

新人が配属されると、実際に作業指示を出すことになるが、ここが人材育成の要なので指示の出し方は丁寧に。とりわけ、5W1Hを意識する。5W1Hの中で1番大切なのは「これをやって」というWhatではなくWhyである。部分的に仕事を任せるにしても、作業の目的を理解させ、その仕事がチーム全体に対してどのように貢献するのかを教えることが重要だ。

また、指示を出す際には、必ずリスクポイントを提示する。どこでどういう情報を報告・連絡・相談しておかないと失敗するのか、失敗したときにどういう結果が待っているのか理解させるのだ。具体的な指示を出さずに、ただ「報・連・相が大事である」と伝えても、新人には理解できない。

報告で伝えるべきことは、進捗状況と成果、問題点、残作業の4つ。連絡は、事実を周りと共有する作業。緊急性とレスポンスの必要性を確認する。相談は、問題解決のプロセス。問題の大きさを見極めるよう指示し、解決策を提案するよう促す。

指示をして作業をさせたら、最初の段階では、最大でも1時間ごとに自分から声をかけるなどして、新人の作業の状況をモニタリングする。それ以上放置すると新人の作業ミスや作業の停滞などに繋がる危険性がある。

仕事を振る段階で作業を細かく分け、新入社員が行う作業の単位時間を短く設定することが鉄則だ。

例えば、顧客のニーズを把握するためにヒアリングに行くという仕事を分解すると、(1)ヒアリングの目的整理 (2)質問項目作成 (3)ヒアリング対象の選定 (4)アポイント取り(日程・時間の調整) (5)ヒアリング (6)結果をまとめる、という6つの作業に分けることが可能だ。公式的なものであれば(7)先方への確認 (8)最終的な修正 (9)社内外へのレポート作成という作業も加わるだろう。

このように細かく分解することで、1日の仕事を時間単位、分単位で捉え、モニタリングすることが可能となる。

難易度の高いWhyに当たる(1)と(2)は上司が行い、それらについて説明したうえで(3)や、難易度の低い(4)と、(5)の際のメモ取り、(7)などは新人に任せてよいものと判断できよう。

さらに(5)の「ヒアリング作業」を、最初の導入部分の説明、本題での質問のやり取り、まとめという3つに分け、自分と新人の間で仕事を振り分けてもよい。

営業職で入ってきた新人と、私が一緒に営業に行った際には、営業の導入部分である資料説明は新人に任せ、本論のお客様からの質問対応は上司である私が、まとめとして聞いた内容をもう1度確認する作業については新人が、という分担を行った。

こうすることで、どの程度新人が資料説明を行えるようになったかモニタリングできると同時に、その新人の説明をもとに顧客がどういう質問をし、それにどのように答えればいいのかを見せることができる。