ユニクロでは平均2年で年間売り上げ数億円、従業員数十人の責任者となる。入社してすぐに始まる管理者教育、幅広い仕事を経験させる「社内インターンシップ」など、同社のスピード人材育成の仕掛けを紐解く。
ユニクロ大学とOJTの繰り返しが短期育成を可能に
管理職の最大の要件は? と問われれば誰もが異口同音にマネジメント能力と答えるだろう。しかし、現実に管理職に起用する際にマネジメント能力が最も重視されているかといえば、必ずしもそうとは言い切れない企業も少なくない。彼はプレーヤーとして優秀だから課長になってもうまくやってくれるだろう、という曖昧な根拠と期待を込めて起用している企業がおそらく多いのではないか。
その背景には、自社の理念・価値観に根ざした明確なマネジメント像が確立されていないこと、もう1つはマネジメント教育を通じたアセスメントの不徹底がある。マネジメント研修といえば、管理職になって初めて実施する企業が多いが、本当に優秀なプロのマネジメントを欲しているのであれば、管理職になる前の段階で教育とアセスメントを通じて養成するべきだろう。
その点、多店舗展開する外食・流通企業では比較的若くして店長に起用するケースが多く、早期のマネジメント教育という観点では大いに参考になる。
ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングは売上高1兆円を目指して「大型店戦略」を推進中だが、全社的なメッセージとして「成長」を最大のキーワードに掲げるとともに、会社の成長を支える社員個人の成長を促す人事戦略を展開している。
「成長しなければ死んだも同然という強い成長志向が当社のDNAといってもいい。当然、個人の成長なくして会社の成長もないし、会社の成長なくして個人の成長もないという一貫した考えが根底にあります。ただし、成長するのはあくまで自己責任というのが大前提。誰かが成長させてくれるのではなく、会社は働くステージを提供するなど支援はしますが、成長のチャンスを掴みとるのは個人の責任です」(ユニクロの柚木治・人事担当執行役員)
近年は自己責任を振りかざし、社員の教育を現場に任せっぱなしにしている企業もあるが同社は違う。どうすれば成長できるのかというプロセスが可視化(見える化)されている点が大きな特色だ。同社は入社後の若い段階でビジネスの基本である店長を全員に経験させることにしているが、店長になるための教育を成長の基礎として重視している。