社内ローテーションとは、1年間の期間限定で本部などの他の部署に異動し、仕事を経験するものだ。本人の申告に基づき異動部署と面接して決定するが、場合によっては1年過ぎても、双方が合意すれば“社内移籍”となる可能性もある。社内インターンシップは、1カ月間限定で他の部署での仕事を経験する。働いてみたい部署を第3希望まで出すが、これは全社員に実行してもらうことを考えている。

「店長をやるうえでも本部のいろんな仕事を知り、視野を広げてほしいという思いがあります。また、店舗と本部のコミュニケーションの活性化や人的ネットワークをつくってほしいという期待もあります。いろんな情報やチャンスを与えて個人の成長を促そうというのが最大の狙いです」(柚木執行役員)

店長というマネジメントの基礎的訓練をベースにあらゆる部署での経験を通じて個人の成長力を高め、その果実が会社の成長に直結するというのが同社の人事戦略の基本にある。また、正社員の成長力促進のみならず従業員の多くを占めるパート・契約社員の活性化にも取り組む。

同社は今年4月からパート、アルバイトなどの店舗スタッフを正社員に登用する「地域限定正社員制度」を導入した。従来から契約社員の店舗スタッフを正社員に登用する仕組みはあったが、優秀な女性であっても転勤があるために応募者が少なかった。今回導入したのは転勤がなく、地域に限定した社員と位置づけることで「有能な人材にもっと活躍してもらう仕組みとして導入した」(柚木執行役員)ものだ。

導入にあたり、スキルや技能に応じて昇格・昇給していく地域限定正社員独自の賃金体系を構築。店長への昇進も可能であり、さらに地域限定正社員から転勤のある社員への道も開かれている。同社には店舗のパート、アルバイトの総数が約2万人いるが、うち5000人のフルタイム勤務者を2年かけて順次地域限定正社員に移行していく計画である。

正社員、地域限定正社員、パート、アルバイトといった多様な雇用形態を抱える流通業にとっては、個々の従業員の役割に応じた能力をいかに開花させ、戦力化することが人事戦略上の最大の課題といえる。同社の取り組みは、正社員に限らず、従業員個々のモチベーションを刺激する多様なチャンスを提供することで個人の成長を促そうという好個の事例といえるだろう。