改革をやり遂げるリーダーには、通常業務のリーダーとは違う資質が必要である。「本物の改革リーダー」はどのようにして選定すればよいのだろうか。また、資質が備わっているか否かを判断するメルクマールは何だろうか。
変革に必要な能力と日常業務の能力とは全く異なる
企業の現場は、日々、経営課題を解決すべく奮闘しているのだが、そのプロセスでさまざまな壁が立ちはだかり、壁を乗り越えることができないままに終わっ てしまうのは残念である。解決完了の日まで関係者をコミットさせ、最後までやり抜くにはどんな条件がそろえばよいのだろうか。
経営課題の解決を成功させる第1のポイントは、課題解決のために責任を明確化した体制・組織を編成することである。特に、いままで経験したことのないス ピードで組織の方向性を変えなければならないような場合、既存の人事の枠組みによる体制で解決することはむずかしい。また、変革を最後までやり遂げられる リーダーの資質を見抜くことも、従来の評価の枠組みではむずかしい。そこで、課題解決という明確な目標を持った組織編成の仕方と、それを率いるリーダーの 資質の見極め方について、ケースをもとにしながら考えてみよう。
ある輸送機器関連の部品メーカーでは、「製品開発の業務効率を30%引き上げる」という目標を掲げ、それを達成するために開発と初期生産の各プロセスで 解決すべき課題を特定した後、課題解決のためのプロジェクトチームを既存の組織とは別に、最大3年の時限性を伴って置いた。
プロジェクトチームの編成は、個別課題を最終的に解決する結果責任を負っている「オーナー」(多くの場合、部門長、部長クラス)、オーナーに対して問題 やその原因の詳細を分析し、解決策の選択肢に関する提言を行う「問題解決提言チーム」、およびそのチームをリードする役割の「プロジェクトリーダー」、プ ロジェクトリーダーの下でデータ収集や個々の分析を担当する「メンバー」で構成される。
チームづくりでは、まず特定の人間をその課題を解決させる最終責任者(オーナー)と決める。オーナーの資質は重要だ。経営的視点を持ち合わせていること はもちろん、何を自分で決めて何を経営判断にかけるべきなのかを瞬時かつ正確に判断する力、他の組織や役員を巻き込む思考力や行動力が求められる。さら に、チームをより広い視点や思考面からリードする見識の深さや、前例のない検討を強いられるチームを鼓舞し続けられる人間的リーダーシップが必要になる。