顧客離れで存亡の危機に立たされていた企業が、たった半年でなぜ8倍もの営業成績を残せるようになったのか。秘密は外部から期間限定でやってきた1人の敏腕営業マネジャーだった。

年末になると確実に諦めムードが漂うんです

顧客離れに苦しむ1つの民間シンクタンク(以下A社)があった。社員400人規模の中堅企業である同社は、セミナーやコンサルティングを通じた企業の経営支援を主な事業としている。登録制で運営され、顧客からの月額フィーによって事業が成り立っている。最盛期は、約1万社以上の顧客数を誇っていたが、10年ほど前から年間数百社ずつ登録社数が減少。新規顧客獲得が追いつかず顧客が減る一方で、会社存亡の危機に陥っていた。

オフィスに入ると、壁には横断幕が掲げてある。「新規顧客獲得数、年間2000件」とある。

「この目標はある種のお飾りみたいになっています。ここ数年は1度も達成したことがないのです。年末になると確実に諦めムードが漂うんですよ」

こう語るのは経営企画室で営業推進を担当している木下氏(仮名)だ。

「弊社は創立が古く歴史ある会社で、もともと一定数の顧客がいたので、それに甘んじていた部分があったと思います。新規の顧客を増やすことをあまり真剣に考えてこなかったのです」
このような状況に危機感を感じていた木下氏をはじめ経営陣は、1度は自社で解決しようと試みる。

「数年前に新規顧客獲得を専門とする営業チームを設けました。企業をリタイアされた営業経験豊富な50~60代の方に業務委託したのです。しかしなかなか結果が出ず、それどころか皆さんすぐに辞めてしまいました」

木下氏は営業マネジャーをおかず、業務を個々の営業マンの裁量に任せていたことが敗因だと言う。

「個人タクシー5台で営業しているようなもので、個々人が自分のスタイルでやっていました。お客さんを取ってくる人もいれば、そうじゃない人もいて、ばらつきが大きかったんです」