正社員もパートもプロとして働き、風通しがよく離職率も平均の半分……。こんな快適な職場環境を実現したのは、人材不足解消に挑んだ1人の看護部長だった。
看護師免許保持者の3割が「潜在看護師」
企業の人事担当者は、優秀な人材の確保に頭を悩ませなくてはならないうえ、採用した後も悩みは尽きない。次々に出る新商品や新サービスに対応したり、めまぐるしく変わる顧客の要望に応えるストレスに、社員が疲弊して辞めてしまわないよう、気を配る必要があるからだ。
実は、こんな悩みがより深いのは、看護師の世界だ。夜勤がある、重労働、待遇がよくない……。厳しい条件が揃っている。人口の高齢化による医療ニーズの高まりなどから、看護師不足はさらに深刻になっている。看護師を確保できなかったために病院が閉鎖に追い込まれるケースも出ているほどだ。看護師採用の現場で得られた質の高い人材を確保し育成するプロセスは一般企業にも参考になるだろう。
日本看護協会によると、毎年約5万人が看護学校などを卒業、そのうち約3万8000人が看護師として就職するが、9.2%は1年以内に離職、新卒以外も含めた離職率は12.4%に上る(2007年の調査結果)。
つまり、看護師資格を持つ人材が不足しているというよりも、多くの看護師たちが医療現場を離れてしまうことが、現在の看護師不足の原因の一つといえそうだ。
「現在日本には、看護師の資格を持つ人が約176万人いますが、そのうち約55万人は看護師の職についていない『潜在看護師』だといわれています」と、看護師の人材紹介を行うスーパーナース社長の西川久仁子氏は説明する。
「看護師不足が深刻化する中で、最近になってこの潜在看護師に注目が集まっています」(西川氏)
潜在看護師を医療現場に呼び戻す動きが起きてきたきっかけの一つが、06年4月の診療報酬改定だ。入院患者対看護師の比を「7対1」に増やすことで、病院への診療報酬が増額されるようになったため、全国の病院で看護師の争奪戦が繰り広げられるようになったのだ。
済生会横浜市東部病院(以下、東部病院)では、横浜市鶴見区下の4病院と共同で、潜在看護師向けの病院見学・体験会を開催している。