知名度もなく、従業員わずか18名の小企業が、「採用活動」を「営業活動」に変えることで優秀な学生の確保に成功。この方法は大手企業をはじめ多くの企業でも応用できるはずだ。
採用活動は、営業活動の意気込みでやるべし
学生の「超売り手市場」といわれる現在、中小企業の多くが学生を集められず苦戦を強いられている。そのような状況の中で、採用枠5名にもかかわらず、エントリー者数79名を獲得し、会社説明会に29名を呼び込み、うち24名を選考に導き、6名を入社させることに成功した企業がある。
設立5年目、社員数わずか18名のシステム開発会社、リンク・アップ(本社・東京赤坂)である。公共システムの開発に携わっているが、大手企業への特定派遣であり、知名度はないに等しい。同名他社が複数あり、WEB検索でも上位に表示されない。2007年、SEを採用すべく、初めて本格的な新卒採用に乗り出したという会社だ。
人事部すら存在しない同社は、最初に成果報酬型の採用アウトソーシング会社を3社、利用してみた。
「紹介された人数は本当に少なかったです。求める人材とのギャップも大きく採用には至りませんでした。弊社にもカラーがあります。そこからはみ出してしまうような人を妥協して採用したくはなかったんです」
こう語るのは採用担当者の黒田啓子専務だ。ではなぜ、最終的に“妥協採用”せずに学生を「選ぶ」ことができたのか。その秘密は、採用活動に徹底した営業手法を取り入れたことだ。
これは、中小企業の採用支援サービスを行っているビジャストが提供するもので「会社=商品」と位置づけ、営業によって会社を売り込み「入社意欲=購買意欲」をあげるというものである。同社の西野裕社長は、中小企業が学生に選ばれない理由は「知ってもらう努力をしないからだ」と語る。
「学生をただ待って、入社したい人を選ぼうとしている企業が多いのです。広告を出してお客様を待っているだけ。それなのに買う気満々に違いないと勘違いして学生を審査・吟味しようとする。企業は学生を待って選ぶのではなく、選ばれる立場です。採用活動は営業活動の意気込みでやらなくてはなりません」
また、大企業に合わせた早すぎる採用にも苦言を呈す。
「内定を出した時点で企業は攻めから守りの態勢になります。採用はむしろ遅いほうが、学生が迷わずにすみ、囲い込みのコストもかかりません。採用が遅いと優秀な学生が獲得できないというのは錯覚。学生は『もっといい会社があるのでは』と常に新しい情報を求めているものです」