『七人の侍』は、農民を救うために7人の侍が40余人の野武士を相手に戦うというワクワクするストーリーと迫力ある戦闘シーンでファンの心を捉えて放さない映画である。しかし、野武士撃滅をプロジェクトとして見ると、マネジメントに応用できるヒントがちりばめられていることがわかる。
プロジェクトの使命と戦略の根拠を再考してみよう
黒澤明監督の『七人の侍』が封切られたのは50年以上も前のこと。しかし、その面白さは少しも色褪せていない。さらに、競争社会という“戦乱の世”を生きるビジネスマンとして、そこから何を学ぶかという視点で改めて見ていくと、生きた「マネジメントの教科書」であることがわかってくる。
まず、映画の内容を思い出しながら下のワークシートに挑戦してほしい。ここにある設問は、実際に『七人の侍』を題材にしたマネジメント研修のカリキュラムに基づいてつくったものだ。この順で“野武士撃滅プロジェクト”を再検証すると、ミッションの策定から戦略立案に至るまでのプロセスや、組織運営のためのリーダーシップなどが理解できるようになる。
ここの設問[1]を通して学びたいことは、「成果・結果の分析」の重要性だ。1つのプロジェクトを再検証していく際には、最初に成果・結果を正確に捉えておく。すると、なぜそうなったのか、要因・原因として押さえるべきポイントが定まり、ビジネスにも応用することができるようになる。
では、『七人の侍』のラストシーンを思い浮かべてみよう。農民たちは、笛や太鼓の音色に調子を合わせて歌を唄いながら、楽しそうに田植えをしている。野武士がいなくなり、丹精込めてつくった米や作物を略奪される心配がなくなった喜びが伝わってくる。彼らは満足できる成果を得たのだ。
でも、今回のプロジェクトには、農民のほかにもう1つのグループが大きくかかわっている。そう、7人の侍たちである。「発注者=農民」と「受注者=七人の侍」に分けて、おのおのの立場から成果を測定しなくてはならない。
農民とは対照的に、侍のリーダー格である勘兵衛(志村喬)の表情は一向にさえず、「今度もまた負け戦だったな」とつぶやく。かたわらの七郎次(加東大介)が驚きの表情を浮かべると、勘兵衛は「勝ったのは、あの百姓たちだ。俺たちではない」と話す。