このときの勘兵衛は、「勝ち目が少ない戦によく参加してくれた。そんな前途有為の侍を4人も亡くした。かけがえのない損失だった」という後悔の念を抱いていたのではないか。戦略策定や組織運営のどこに手抜かりがあったのか、自問していたようにも思える。

その要因・原因を探るためにも、ワークシートに立ち戻って、野武士撃滅プロジェクトのスタート時点から順を追って考えていくことにしよう。

「勘兵衛がとった戦略の根拠」を考えるのが設問[2]である。通常、戦略の前提となるいろいろな要素を、「理念・方向性」「外部環境」「経営資源・能力」という3つの分野に分けて整理する。それらが小問(1)~(3)に当たる。

真っ先に考えるべきものは「理念・方向性」だ。今回のケースは、発注者である農民たちの意向がそれに当たり、「飯を食わせるから、野武士を撃滅して村を守ってほしい。ただし、長居は御免被りたい。できるだけ短期間で済ませてほしい」ということになろう。

「外部環境」としては、戦国時代の度重なる合戦で主を失った侍が巷に溢れていることや、鉄砲が普及し始めて村を襲う野武士たちも持っている可能性が高いこと、しかも騎馬集団で機動力に優れていることなどをあげたい。また、「経営資源・能力」としては、農民も戦おうと思えば戦えること、村の周囲には山や川、そして田んぼがあることなどが含まれるだろう。

その整理ができたら、プロジェクトの大目的ともいうべき“ミッション”を立てる。それを設問[3]で行った。ポイントは、自分たちの顧客が誰で、何を期待されているかを把握すること。これはビジネスでも同じだ。

このプロジェクトでは農民の願いを直接反映した「野武士の脅威を取り除き、安全な生活を取り戻すこと」となる。ただし、無期限でよいわけではなく、「短期間に野武士集団を撃滅する」という“目標”を定める。さらに、目標達成に向け、どのような戦略をとるかの判断基準として「侍と農民の連合体で野武士を撃滅する」「村での籠城作戦をとる」といった“方針”を決める。

 

リーダー勘兵衛の強み、弱み、戦略の手抜かりはないか

次に設問[4]でチャレンジした戦略の策定プロセスへと移る。実は戦略策定には基本となる型が存在する。設問[2]で検証した要素について、自軍(侍と農民)にプラスかマイナスか、競争相手(野武士)にとって弱みか強みか、将来にチャンスと脅威のどちらをもたらすかなどを分析する。そこで出てきた1つひとつの戦略課題を、方針と照合しながら取捨選択する。