自分からは動こうとしなかった人たちでも、プロジェクトチームのメンバーから指摘されて、「たぶん、そうなんだろうな」という反応がある場合は、比較的実行プロセスが進めやすい。ところが、問題があるのは確かなのだが、内部の人たちがそれに慣れてしまっていて、なぜ問題なのか理解してくれないケースも多々ある。そのような場合、従来からの慣行を変えようとすることに対して非常な抵抗をみせる。

抵抗勢力という壁にぶつかったときは、ファクトで迫るのがよい。ファクトとは、同業他社とのベンチマーク比較や、「他業種のA社がこの問題を解決して、このくらい業績がアップした」といった実績を示して目を開いてもらうことである。「解決前・解決後」の違いに驚いて、「じゃ、われわれの場合はどうやったらそれを採り入れられるのか?」などと考えが進むようになると展開が早くなる。

企業が抱えている課題は、経営陣、管理職、従業員にいたるまで、その企業を構成する構成員すべてを動かせなければ解決できない。

本稿では社内を少しでも動かしやすくする技術のいくつかを紹介した。しかし、言うまでもないことだが、こうした技術は経営者の改革に対する意思や姿勢を代替するものではない。すべての改革のドライバーはトップであり、トップが強い意志を見せ、トップから権限を委譲されることで、問題解決に関わる責任者やスタッフは最大限の力を発揮する。

いかなる場合であれ、経営課題を解決するのは、課題を抱えている企業自身であり、トップのコミットメントと構成員全員の強い意志にかかっているのである。