「雇用を流動化」も有効な策ではない

日本のキャリアについて考える時、人はしばしば、「硬直的な市場をもっと流動化させよ」「解雇規制を緩和せよ」といった発想に飛びつきます。中高年になったら自動的に外に出るキャリアを考えさせる「40歳定年制」などのような提案もしばしば聞かれます。企業の外にある「外部労働市場」を活性化させ、転職を促進すれば、みな学ぶようになるはずだ、というロジックです。

さて、そうした流動化によって、人は学ぶようになるでしょうか。答えはNOです。流動化推進派の人たちは、大企業正社員のことばかり頭にあるようですが、日本で流動性が高く、転職が多いのはアルバイト・パートといった非正規雇用の領域、そして中小企業で働く人々です。そしてその領域は、日本の中でも最も学ぶ習慣のない領域と見事に重なっています。

段ボールに入った荷物を持ちオフィスのエレベーターに乗っている男性
写真=iStock.com/gorodenkoff
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必要なのは「内部労働市場」のアップデート

筆者が主張するのはむしろ逆です。日本人に学びの種火を作るには、企業の中の「内部労働市場のアップデート」を図ることが必須のプロセスです。

具体的には、キャリアについての「対話」をベースにした社内のジョブ・マッチングの仕組みで社内の人材流動性の「質」を変えていくことです。拙い造語ですが、「対話型ジョブ・マッチングシステム」の仕組みと呼んでいます。