職場の若い世代との関係づくりでは、なにに注意するべきか。健康社会学者の河合薫さんは「いわゆるゆとり世代は褒められて育っているので、ストレス耐性が低い。ただ、上司が気を遣って褒めてばかりいると、自己評価だけが高い“モンスター”になってしまうので、上司らしくきちんと指導したほうがいい」という――。

※本稿は、河合薫『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか 中年以降のキャリア論』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

会議室で話し合う日本人男性ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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40代上司を追い詰めた“ゆとりモンスター”の言動

「お恥ずかしながら、私、うつで休職してました」

バツが悪そうにこう切り出すのはササキさん(仮名)、44歳。大手メーカー勤務の係長さんです。現場のメンバーをまとめる役割を担う彼を追い詰めたのは、長時間労働でも、上司のプレッシャーでもありません。“ゆとりモンスター”です。

【証言 大手メーカー勤務のササキさん(仮名)44歳】

「海外展開の部署に異動になって出張も多かったですし、月100時間くらいは残業してましたから、かなり疲弊していたことはたしかです。でも、部下のことが一番しんどかった。

お客さんにシワシワの資料を平気で出す、注意すると幽体離脱したみたいに無表情になって聞こえないふりをする、周りが残業していても見向きもしないでとっとと帰る。自分がやりたくないことは絶対にやらない、地味な仕事は『それ、なんの意味があるんですか?』とやたらと聞いてくる。そのくせけっこうナイーブで、すぐに自信喪失する。そのたびに周りが慰め、褒めなきゃならない。放っておくと貝になり、誰かに優しく声を掛けてもらえるまで、すね続けるんですよ。

一つひとつは些細なことだし、余裕があれば笑って終わりにできることばかりです。でもね、毎日毎日顔を合わせるわけでしょ。その度に何かしら起こる。大きな声でも出そうもんならパワハラになってしまうから、ひたすら耐えるしかない。すると、どうなると思います? 次第に自分を責めるようになるんです。自分にはリーダーとしての能力がないんじゃないかって。もう出口がない感じでした。」