「自尊心」と「自己評価」は違う

また、自尊心(自尊感情と呼ぶ場合もあり)という言葉も一般的に広く使われていますが、心理学ではM・ローゼンバーグが定義した「自分自身に対する態度・評価・信念」と理解されています。

河合薫『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか 中年以降のキャリア』(ワニブックスPLUS新書)
河合薫『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか 中年以降のキャリア論』(ワニブックスPLUS新書)

自尊心の形成には他者からの関わり方が強く影響し、とりわけ幼少期の親の関わり方が重要です。かつては「無視するより殴るほうがまし」といった過激な意見が研究者から出るほど「関わること」が重視されました。

ここでの「関わる」は「褒める」ではありません。「いいことはいい」と認め「悪いことは悪い」とたしなめる経験が、自尊心を育みます。

自尊心は「自分と自分の対話」で成立するもので、それは「自分を尊重する心」であり、「自己への確信」です。自分との対話がないままに、他者からひたすら褒められると、自己評価だけが拡大し「自己過信」する子どもになる可能性を高めます。

上司は上司らしく振る舞えばいい

つまり、上司が部下と関わる際に、なんでもかんでも褒めたり、要求をいちいち受け入れていると、彼らの「生きる力」「ストレスに対処する力」が衰えてしまうのです。

大切なのは、相手=部下の意見をきちんと聞き、自分=上司の意見もきちんと伝えること。上司は上司らしく振る舞えばいいのです。伝えるには、教える、指導するも当然含まれますが、「自分の心にしたがった意見」を伝えてください。まちがっても「神様の内面化=悪の陳腐化」にならないようにお気をつけて。

そして、部下があなたの意見を受けとめ、「そっか! こうすればいいんだ!」と小躍りした場面になったら200%褒めてください。これこそが「共感」(前述)です。

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