不祥事に直結した「3つの根源」
中古車販売大手のビッグモーターによる保険金の不正請求問題が、大きな波紋を呼んでいます。独自のビジネスモデルで急成長を遂げ、現在全国に300店舗、従業員6000人、年商7000億円で業界トップに君臨している同社は、どこで道を踏み外してしまったのでしょうか。筆者は、業界の特性、同社の組織風土、そして、そのビジネスモデルに、不祥事に直結した3つの大きな根源があったとみています。
まず、中古車販売の業界的な特性から説明します。中古車販売のビジネスモデルは、その名の通り中古車を買い取り整備の上、利益を乗せて再販するという、至って単純なものです。主な販売先の違いで、大きく2種類に分けられます。
主に業者専用のオークション会場で販売する「オークション販売」と、自社で直接客に販売する「自社直販」です。前者は在庫負担が比較的少ない代わりに、業者向け販売でかつ仲介手数料がかかるので利幅が小さくなります。後者は直販であるがゆえに、折衝次第で利益の上乗せが可能ですが、集客のための店舗整備や宣伝広告にコストがかかります。ビッグモーターは主に後者です。
薄利多売のビジネスモデルで、急速な店舗網拡大
10年ほど前までこの業界の直販粗利は20%前後あったと言われていますが、ネットでの一括見積が当たり前になったことで同業者間での値引き競争が激化し、今は10%~15%というのが実態なのです。そのような状況下にあってビッグモーターは、どこの店も大量展示を原則とした大型店舗を構え、また有名タレントを使ったメディア広告も積極的に展開するなど、ランニングコストは業界内でも飛び抜けて高かったと思われます。
まさに薄利多売のビジネスモデルです。このビジネスで右肩上がりの成長を目指すためには、多売を加速度的に増やす必要があり急速な店舗網拡大を仕掛けることになるのです。ビッグモーターにおける業容拡大に関するひとつの大きな転機は2005年、関西圏の中古車販売大手で東証二部上場企業ハナテンとの資本業務提携でした。派手なCM展開で集客を図って売り上げを伸ばす手法は、ハナテンに学んだともいえます。16年にはハナテンの株式を100%取得して完全子会社化し、これを機に出店ペースが急速に上がっています。