親が子に心配していることを伝えるとき、どう声かけすればいいか。人材育成コンサルタントの嶋津良智さんは「娘の帰りが遅いときに『今何時だと思ってるんだ』と怒鳴りつけるのは三流の対応だ。その怒りの感情はわが娘を思う気持ちから来ている。『大切だ』『不安だ』という第一感情をそのまま伝えるといい」という――。

※本稿は、嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)の一部を再編集したものです。

無礼な子供を叱る母親のシルエット
写真=iStock.com/ImagineGolf
※写真はイメージです

「その怒りがどこから来ている感情か」を考える

・感情の把握
三流は、第二感情で話し、
二流は、黙り、
一流は、何を伝える?

高校生のお嬢さんとの折り合いが悪いという男性が、セミナーにいらしたことがあります。

彼の話をよく聞いてみると、お嬢さんの帰りが遅いと、つい、

「お前、今何時だと思ってるんだ!!」

と、怒鳴りつけてしまうんだそうです。

「その怒りは第二感情ですよね。その怒りは、どこから来ている感情ですか?」

と私が聞くと、

「大切な娘だからこそ、帰りが遅くて何かあったんじゃないかという心配からきているんじゃないでしょうか」

との答え。それなら、「大切だ」「不安だ」という第一感情で話したらどうでしょうか、とお話ししました。

数日後、いつものように娘の帰りが遅くてイライラしていたお父さん。やっと帰ってきた時に怒りそうになりましたが、私との会話を思い出して

「何かあったのかと心配したぞ。何もなくてよかった。遅くなる時は一本連絡してくれると安心するから、連絡してくれるかな」

と、心配する気持ちを素直に伝えました。いつもは「娘の帰宅が遅くて、父が怒鳴る」の繰り返し。それが突然、そう言われてお嬢さんはとても驚いたようでした。

お父さん自身は、自分の素直な感情を伝えられて、気持ちよかったそうです。いつもはふてくされて自分の部屋へ行くお嬢さんも、その時はさすがにバツの悪そうな顔をしていたそうです。