「正直残念」と素直に伝えられるか

怒りの感情は、多くの場合、第二感情です。不安、ストレス、痛み、悲しみ、苦痛、絶望、悲観、期待、願望……といった第一感情が奥にあって、それが第二感情の怒りになって現れるんです。

「この怒りの第一感情は何か?」と考えると、怒りという第二感情を発散する三流のコミュニケーションでもなく、その場で感情を飲み込んで怒りも心配も伝えないという二流のコミュニケーションでもなく、まったく違う本当の感情に気づいて伝えられるはずです。

「今、玄関のドアを乱暴に閉めたよね。大きな音がしてびっくりしちゃったし、ご近所にも迷惑だよね。この前もドアは静かに閉めてねって言ったばかりなのに、また同じことをしたのは残念だな。次は気をつけてね」
「先週の打ち合わせでこの仕事は事前に各セクションの合意をとっておいてってお願いしたけど、その通りにしてくれなかったことが、正直残念。スムーズに進めば、部長からもあなたの調整能力が評価されると思ってお願いしたんだけど」

そんな、第一感情を素直に伝えられることが一流のコミュニケーションです。

一流は、第一感情を伝える
本音の感情を大切にして、伝える

感情にも「タイムアウト」が必要

・アンガーマネージメント
三流は、感情を爆発させ、
二流は、感情を抑えこみ、
一流は、どうする?

人間には感情があります。喜怒哀楽の表現は、人間らしさともいえます。

ですから、感情を表現することは、悪いことではありません。

ですが、使い方を間違えてしまうと、人間関係を壊してしまったり、仕事を失ったり、お金を失ったりと、まるで事故のような不運な出来事を招いてしまうことがあります。

特に使い方の難しい感情が、怒りです。ちょっとイライラして言った、

「バカ! なんでそんなことするの!」
「何やってんだよ! それじゃダメだろ!」
「いっつもそうじゃん!」
「何度言わせるんだよ!」

なんて言葉が、大きな事故を引き起こしてしまうことがあります。

そこで、一流のコミュニケーションのためにおすすめするのが、熱くなってきそうだなと感じたら、回路を切り替えることです。

怒りを声に出してしまうと、その勢いで、感情は一気に爆発してしまいます。ですから、とにかく一旦、黙ってみましょう。心の中で10数えたり、怒りがうずまいているその場を離れるのも良い方法。

私は、ママ向けのセミナーで話す時、

「子供に怒りをぶつけそうになったら、何の理由がなくてもいいですから、一回、キッチンへ行くようにしてみてください。何の理由がなくてもいいですから、冷蔵庫を開けてみてください。

何の理由がなくてもいいですから、頭を冷蔵庫へ突っ込んでみてください。その後、子供のことに戻ってみてください。すると、『私は今から、怒ろうとしているんだな』と、自分の心と客観的に向き合えるようになります。

文字通り頭を冷やすわけです。これくらい意識してやってみるといいですよ」と話しています。

スポーツを観ていると、勝負の流れが相手に有利になってきたら、タイムアウトを取りますよね。「間」は、流れを変える上で、とても有効だからです。感情も同じです。

夫婦で大切な話し合いをしているときや、会社の会議で、白熱してきたら、

「熱くなってきているから、ちょっとコーヒーいれるよ。休憩しようよ」

なんて声をかけるのもいいですよね。タイムアウトを入れれば、感情の激しい流れを変えられます。

ジャングルの上のベッドで若い女性。自然との親密さ。
写真=iStock.com/galitskaya
※写真はイメージです

感情はコントロールできないと思い込まずに、感情コントロールとはスキルなのだと知りましょう。そして、一度二度試してうまくいかなくても、諦めずに訓練していきましょう。

スポーツや楽器演奏で一流になるためには、トレーニングが必要ですよね。

コミュニケーションで一流になるためにも、トレーニングが必要です。うまくなるには、教わって終わりでなく、トレーニングをして、トライアンドエラーを繰り返しながら、自分のやり方になじませていかなければ、使えるようにはなりません。

どんなに素晴らしいコーチから指導を受けたとしても、話を聞いただけでは、すぐにうまくならないのは、コミュニケーションでも一緒なのです。

一流は、感情をコントロールする
イライラに「待った」をかける