損保会社との「持ちつ持たれつ」の関係

そして3つ目の根源は、問題をより悪化させた損保会社との持ちつ持たれつの関係です。ビッグモーターは損害保険会社の代理店として、中古車を販売した際の自賠責保険の紹介をします。一方の損害保険会社としては、保険契約者から事故報告があった際にその修理工場としてビッグモーターを紹介する、という関係もあります。すなわち双方にとって双方がお客様であり、ビッグモーターはその関係を利用して、各損害保険会社からの修理紹介の量に応じて保険の紹介を振り分けてきたといいます。

1台14万円の修理目標を達成すべく不当に上乗せされた修理が、本来であれば損保会社によって早期に発見、排除されていなくてはおかしいのですが、それがなされていませんでした。特に損保ジャパンは2011年以降、37人もの出向者を出して(中には事故車の修理を担当する板金塗装部門の担当部長を務めた出向者もいました)、内部事情もある程度分かっていながらです。損保ジャパンに関しては、疑惑が本格化した22年6月に大手損保3社が修理斡旋をストップしたものの、同社だけは翌7月には斡旋を再開しており不透明感が拭えません。

ビッグモーターの店舗で立ち入り検査をする国土交通省の職員=2023年7月28日午前、さいたま市緑区
写真=時事通信フォト
ビッグモーターの店舗で立ち入り検査をする国土交通省の職員=2023年7月28日午前、さいたま市緑区

「厳しい指導」が下される可能性が高い

損保ジャパンがビッグモーターの不正を知りながら、自社の商売を優先して目こぼしをしていたならば、これは由々しき問題です。本来不正を早期にストップできたはずが、それをせずに契約者に対して保険等級低下による保険料アップなど不利になる取引を黙認していたわけですから、それは保険契約者に対する重大な裏切り行為であり、絶対にあってはならないことだからです。損保ジャパンによる外部調査に加え、金融庁も調査に動き出しており、まずはその行方を見守りたいと思います。

それでは、今後のビッグモーターがどうなるのでしょうか。まず国交省が動き始めたことで車両整備に対する厳しい指導が下されることは確実です。ことの悪質さから考え、各工場の処分は道路運送車両法違反での民間車検場の指定および工場の認定取り消しという、最も重いものが想定されます。指定取り消しの場合、最低2年間は再取得できないので、そうなると車検事業は廃業もありえるでしょう。

さらに、損保業界との関係も微妙です。既に癒着疑惑渦中の損保ジャパンはビッグモーターの代理店契約取消を発表しており、他の損保各社もこれに追随する可能性が高いです。大量の紹介案件をつないできた損保会社との取引がなくなれば、修理・整備ビジネスの大幅な縮小と保険代理店業務の消滅が余儀なくされます。