「見えない大陸」に出現した「ゴジラ企業」

そこは19世紀開拓期のアメリカ大陸とよく似通っている。未開の地に次々と杭を打って囲い込み、ここがわが社の事業領域だと主張し、守れば、それがそのまま自分のテリトリーとなるのだ。

グーグル社の創業者で共同経営者のセルゲイ・ブリン氏。
(ロイター/AFLO=写真)

そして「あいつはどうやらあの空間を独り占めする可能性がある」とマーケットが認識した瞬間、売り上げや収益などの20世紀的な業績指標とは関係なく、将来予想される“価値”によってその企業の時価総額は狂い咲くのだ。アマゾンやグーグルはその典型だった。

彼らは収益の40倍、100倍に膨れ上がった株価収益率(PER)や時価総額を武器に、増資をすることで成長資金を調達したり、自分たちより売り上げが大きい企業に対しても株式交換をすることでM&Aを仕掛ける。かつてAOLが株式交換でタイムワーナーを買収し、グーグルやシスコがM&Aを繰り返す。この西部劇さながらの戦場が、マルチプルとサイバーの織りなす経済なのである。

こうした「見えない大陸」に突如出現した企業群を、私は『新・資本論』の中で、「ゴジラ企業」と表現した。ゴジラのように放射線により突然変異的に誕生し、考えられないスピードで成長、高いマルチプルで競争相手をなぎ倒し、市場や経営資源を次々と呑み込んでいくからだ。ボーダレス経済やサイバー経済を少々かじった程度の旧世紀的な大企業(タイタン)では、別種の企業染色体を持つゴジラ企業にかなわない。

そうしたゴジラ的な特徴を備えた企業が中国やロシア、インドにも出現するようになったのが今日であり、その強さの源泉がプラットフォームにあることもようやく認識されるようになってきたのだ。なお、『新・資本論』以降、私の戦略論関連の著作は基本的に『新・資本論』のコンセプトに則って論が展開されている。