安倍さんなら今の日本をどうするか

安倍晋三元首相が亡くなって1年が過ぎた。2023年7月8日に一周忌の法要が営まれ、故人をしのんだ。

2023年7月8日、安倍晋三元首相の追悼集会が開かれた。
2023年7月8日、安倍晋三元首相の追悼集会が開かれた。(時事=写真)

この1年は私には長かったという感覚がある。1年の間に、経済や外交上で様々なことが起こり、そのたびに、「安倍さんだったらどう対処するだろうか」と問い返さずにはいられなかったからである。なお、生前は「総理」とお呼びしていたが、ここでは直接話しかけたく思うので、「安倍さん」と呼ぶのをお許しいただきたい。

23年2月に発売された『安倍晋三回顧録』は、たちまち売り切れ、アメリカで手にするのは大変だった。回顧談話の最後に、防衛大卒業式訓示の動画に関する思い出が書かれている。防衛省がつくった式辞の動画を本人が確認したところ、自分の顔だけ映す映像が15分も流れていた。安倍さんは、「こんな映像、誰だって2、3分で見るのをやめちゃうよ」と修正を指示。訓示には最初からBGMをかぶせ、映像を自衛隊の国際的活動や留学生の姿などに大幅に変更した。

その結果、動画は防衛省始まって以来の再生回数を記録したという。これは映画好きだった安倍さんの映像に対するセンスが身を助けた話である。同時に、ピアノ、美術などに造詣が深く多趣味だった安倍さんが、「どうすれば自分の表現が人の心に響くか」を深く考えていたことを示すエピソードでもある。