起訴されてから支持率アップ

2024年11月5日に予定されている次のアメリカ大統領選挙まで、あと1年ほどとなった。年明け早々から民主党・共和党ともに予備選挙や党員集会が開かれ、大統領候補の指名争いが始まることになる。民主党は現職のジョー・バイデン大統領が再選を目指す中、共和党の指名候補争いでトップを走っているのは、あのドナルド・トランプ前大統領である。

2018年6月2日、トランプショップで売られているトランプ大統領の缶バッチ
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トランプは20年大統領選におけるジョージア州の投票集計に不正に介入したとして、8月中旬に起訴されたばかりである。それまでも不倫相手への口止め料支払いに関連する業務記録の改ざん、機密文書の私邸への持ち出し、そしてもっとも需要なのは21年の米連邦議会議事堂襲撃への関与で、刑事事件の容疑者として通算4回も起訴されている。前代未聞の事態だが、仮に有罪判決が出たとしても立候補の権利を失うかどうかは、専門家の間でも議論がわかれている。

もちろんトランプ本人は出馬を断念する気は全くない。各種の世論調査を取りまとめたデータでは、10月12日の時点で共和党員の間のトランプの支持率は58.3%と、2位のロン・デサンティス・フロリダ州知事(同12.9%)を大きく引き離している。しかも多くの嫌疑で起訴された後のほうが、支持率はむしろ上がっているのである。さらに有権者全体での支持率も45.3%と、バイデンの44.5%をわずかに上回っている。世論調査にいろいろ問題はあるにせよ、今選挙を行えばトランプが勝つ可能性が十分あるということになる。

これはアメリカ、そして世界にとって、極めて深刻な事態である。選挙で国民に選ばれた政治家が政権を握るのが民主主義、立憲政治のルールである。それなのに自分が選ばれなかったからという理由で、トランプは選挙に不正があったと訴えて大統領に居座ろうとした。そして、彼の宣言以外には、選挙の不正に関する証拠は何も見つかっていない。彼が再選されるようなことになれば、アメリカは独裁国家に化してしまう危険性がある。