無謀な作戦の犠牲になったロシアの特殊部隊

ロシアの特殊部隊「スペツナズ」が、ウクライナ侵攻後の1年間でほぼ壊滅状態に追い込まれている。

ワシントン・ポスト紙はインターネット上に流出した米国防総省の機密文書をもとに、旅団によっては兵員の90~95%が失われたと報じている。2022年夏にウクライナから帰還した5つのスペツナズ旅団は、「1旅団を除くすべてが大きな損失を被っている」ことが判明したという。

2023年5月9日、モスクワの赤の広場で行われた軍事パレードに出席したプーチン大統領
写真=dpa/時事通信フォト
2023年5月9日、モスクワの赤の広場で行われた軍事パレードに出席したプーチン大統領

スペツナズはロシアの特殊部隊の総称だ。なかには暗殺など秘匿性の高い任務を担う部隊もある。要員の育成に少なくとも4年間のトレーニングが必要とされており、プーチン大統領や軍部にとって再建への道は険しい。

米ワシントン・ポスト紙によると機密文書は、スペツナズ第346旅団は兵士900人中775人が死傷し、「旅団全体をほぼ失った」状態にあると分析している。こうした「驚異的な死傷者数」により、ウクライナ以外の地域でもロシア軍の活動レベルが低下する可能性があると文書は指摘する。

米国防総省の流出文書は、本来高度な訓練を受けているスペツナズが大きな打撃を被った原因は、ロシア司令官らの無謀な作戦にあると指摘している。ウクライナ侵攻を加速したいあまり、高難度のミッションに投じるべき高スキルの人材を前線に放り込み、こうした専門部隊が「格好の餌食」になる状況を自ら招いたようだ。

東部ドンバス地方から生還できたのは7人に1人だけ

軍事・防衛産業関連のニュースサイトである米タスク&パーパスは、スペツナズは「ロシア連邦が擁する最高のエリート部隊」であるとしたうえで、こうした部隊が「ウクライナで破壊されつつある」と報じている。流出文書の内容を取り上げ、スペツナズはウクライナの地で「全滅しつつある」とする内容だ。

スペツナズの戦闘員は昨年来、マリウポリやヴュレダルの街、そして東部ドンバス地方の作戦に投入されてきた。ところが同文書によると、スペツナズ第346旅団は900人のコマンドー(特別奇襲隊員)が所属していたところ、戦闘から帰還したのは125人だけだったという。7人に1人に満たない。