ワシントン・ポスト紙も流出文書を分析し、スペツナズが「大量の死者とけが人に苛まれている」と指摘する。ロシアの複数のスペツナズ部隊がウクライナ侵攻で「完全に破壊された」とし、プーチン政権はその再建に数年単位の歳月を要するとの見方を示している。

記事によると一連の流出文書には、例えばロシア南部の第22スペツナズ旅団が使用する基地について、侵攻の前後を写した衛星写真が含まれていた。侵攻数カ月前の2021年11月と、その1年後に撮影されたものだ。

ロシアの特殊部隊
ロシアの特殊部隊(写真=Министерство обороны Российской Федерации/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

衛星写真で明らかになった“全滅”の実態

前者には「ひしめく車両で賑わう車両保管所」が写っていた。一方、ウクライナからの帰還後にあたる後者では、参戦前に保有していたティグル小型戦術車両の数が半分以下に減っていた。こうした情報をもとに米当局は、車両が「極度の枯渇状態」にあると結論付けたという。

兵員の損耗はさらに激しいようだ。ワシントン・ポスト紙によると流出文書は、この第22旅団を含む3つのスペツナズ旅団について、兵員の90~95%が死傷したと分析している。「全滅しつつある」との表現も、あながち誇張ではないようだ。

記事はさらに、2月には東部ドネツク州ウグレダルの町で、スペツナズ旅団長の死亡が明らかになっていたとも報じている。

ロシア軍に詳しい米外交政策研究所のロブ・リー上級フェローは、「(上官が)あれほどまで前方に出ているということは、おそらく何らかの問題があるのだろう。部隊の損失が大きすぎるか、あるいは想定外の使われ方をしているかのどちらかだ」との見解を示している。

「ソ連のターミネーター」という残虐なイメージ

スペツナズは1957年、冷戦下のソ連時代にロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)内に創設された。戦場の偵察や破壊工作を担うほか、暗殺や諜報ちょうほう活動を担う専門性の高い部隊もある。米インサイダーは、その秘匿性の高さやソ連亡命者が記した書籍の影響から「ソ連のターミネーター」との残虐なイメージを帯びた部隊であると紹介している。

記事はスペツナズの具体例として、いわゆる暗殺部隊と位置づけられる参謀本部・特殊作戦指揮部の特殊作戦部隊(KSSO)を筆頭に挙げる。ほか、陸軍スペツナズとして8旅団と1独立連隊、および海軍スペツナズとして4艦隊など、約1万7000人がいるという。

実際には、必ずしもすべての部隊が暗殺をミッションとしているわけではない。同記事は、「FSB(ロシア連邦保安庁)特別指定センターのまさにエリートの対テロ部隊から、連邦林業局のそれほど手ごわくない即応部隊まで」のさまざまな部隊が存在すると述べている。