イスラエルを「生き地獄」に変えた奇襲攻撃
イスラム組織のハマスは10月7日、実効支配するパレスチナ暫定自治区のガザ地区から、イスラエル側へ急襲を仕掛けた。数千発のロケット弾を発射し、鉄壁といわれたイスラエルの迎撃システム「アイアンドーム」の処理能力を上回る負荷をかけることで防空網を突破。これを陽動とし、地上では数時間のうちに国境のチェックポイントを制圧したあと、次いで国境のバリケードを破壊した。
多くの犠牲者を生んだ奇襲の背後には、ハマスが密かに重ねてきた戦闘準備の存在がある。イスラエルを欺くため平和的態度を装いながら、虎視眈々と襲撃の機会をねらっていたようだ。海外報道により、市街戦の訓練のためにイスラエル入植地を模した訓練場を建設し、さらに作戦が漏れぬよう地下トンネル網を通じてコミュニケーションを取るなど、入念な準備を行ってきた実態が明らかになった。
犠牲者2100人超…戦闘員に拉致され「人質」になった人も
AP通信が10月11日に報じたところによると、イスラエルに突入したハマスの武装勢力は、国境付近の住宅地などで数百人の住民を殺害。ほかの武装勢力とあわせて約150人のイスラエル兵と市民を人質に取っている。BBCによると、イスラエル軍は領内で1200人以上、ガザ当局は900人が殺害されたとそれぞれ発表した。
ハマスの戦闘員に襲撃されたというあるイスラエル女性は、生後1カ月の娘を連れてかろうじて生き延びた。米公共放送のPBSに対し、「(爆撃音から)15分ほど経って、銃声が聞こえました。そして、(外国語の)アラビア語で、『来い、来い』というような声が聞こえてきたのです」と恐怖を語る。
夫に促されるまま、夫を残して寝室から脱出して外の茂みへと逃げ込むが、ハマスの戦闘員たちは狙撃してくる。混乱するなかわらにもすがる思いで鉢植えをかぶり、洗濯機のうしろに隠れてやり過ごしたという。女性と娘は親切な隣人に助けられたが、夫はそれ以来見つかっていない。
米CNNは、9日になってイスラエル軍が街頭での戦闘の制圧を発表したと報じている。イスラエル側はガザ地区への空襲で制裁に出ており、種子島ほどの広さに200万人が住む人口過密の同地区では、食料や医療物資の不足が懸念される。
では、ハマスの攻撃はなぜ防ぐことができなかったのか?