岸田内閣の支持率が下がり続けている。政治ジャーナリストの鮫島浩さんは「マイナンバーカード問題、増税、長男の不祥事と続いているが、自民党内から『岸田おろし』が起きる気配はない。低支持率の岸田政権が延命できているのには、3つの背景がある」という――。
リトアニア・ビリニュスで行われたG7ウクライナ共同支援宣言での岸田文雄首相とジョー・バイデン米大統領=2023年7月12日
写真=NurPhoto via AFP/時事通信フォト
リトアニア・ビリニュスで行われたG7ウクライナ共同支援宣言での岸田文雄首相とジョー・バイデン米大統領=2023年7月12日

マイナンバー問題で内閣支持率は急降下

岸田内閣の支持率が続落している。朝日新聞の世論調査(7月15~16日)では前月から5ポイント下落して37%、不支持率は4ポイント上がり50%に達した。

共同通信の世論調査(14~16日)でも支持率は6.5ポイント減の34.3%、不支持率は7ポイント増の48.6%。キーウ訪問や広島サミットで急上昇した内閣支持率は、閣僚辞任ドミノが発生した昨年11~12月の低水準へ急降下した。

6月の国会会期末に吹き荒れた解散風は一気にやみ、早期解散論はすっかり萎んだ。岸田首相は8~9月に日米韓首脳会談(米国)、ASEAN首脳会議(インドネシア)、G20首脳会議(インド)、国連総会(米国)と続く「岸田外交」で支持率を回復し、合間をぬって内閣改造・自民党役員人事を断行して体制を立て直す考えだが、いったん離れた民心を取り戻して支持率を再浮上させるのは容易ではなかろう。

マスコミはマイナンバーカードをめぐるトラブル続出や首相長男の不祥事による秘書官更迭、異次元の少子化対策に伴う負担増への不満を支持率急落の要因にあげているが、最大の要因は、首相が自ら解散風を煽り、政治決戦へのエネルギーを極限まで高めながら、あっけなく解散を見送ったことにあると私はみている。

それでも「岸田おろし」が起こらない3つの理由

政界もマスコミ界も世論も拍子抜けし、しだいに「伝家の宝刀」と呼ばれる解散権を弄んだ首相への不信感を募らせ、ついには「この首相には解散を断行する覚悟はない」と舐め始めたのだ。

6月解散を見送った時点では「9月解散論」がまことしやかに語られていたが、今では年内解散どころか、来年秋の自民党総裁選前の解散も難しいのではないかという見方が強まっている。6月解散におののいた与野党の緊迫感は今は昔、永田町は弛緩しかんし切った夏を迎えた。

自民党内で「岸田降ろし」の狼煙が上がる気配もない。内閣支持率は続落し、党内基盤も強くないのに、岸田政権がダラダラと続く奇妙な膠着こうちゃく状態に突入してしまったのだ。

これはいったいなぜだろう。以下、3つの理由を解説したうえ、岸田政権の行方を展望してみたい。