13日の知事会見での発表は見送られた

そんな中で、JR東海は4月26日、東電RPと協議を開始するために「前提条件」の文言を確認する文書を県に送った。

当然、流域市町長らは田代ダム案の早期の協議開始を求め、県の誠実な対応を迫った。流域市町の強い圧力に、このまま放置しておくことはできないとみた森副知事ら幹部は、川勝知事へ流域市町長らの意向を説明して、田代ダム案が水利権と関係ないことを県も認める了解を上申した。

川勝知事は6月初旬までに、今回のJR東海への通知案を了解したのだ。

流域市町長らも13日正午までにこの通知案に同意したため、県は13日午後2時からの知事会見で、田代ダム案を了承したことを発表する準備を進めていた。

ところが、当日朝から、森副知事はじめリニア担当の3人の幹部が急遽、山梨県庁の長崎幸太郎知事への説明のために不在となった。

山梨県は、川勝知事の「静岡県の水が引っ張られるから山梨県内の調査ボーリングをやめろ」という科学的根拠のない主張に強い怒りをあらわにして、静岡県を何度も批判していた。このため、川勝知事の指示で森副知事らは予定を変更して、山梨県庁へ向かったのだ。

記者会見が始まる約1時間半前の同日午後0時半ごろ、川勝知事は森副知事から、「山梨県から出る水が静岡県の水」などという主張に長崎知事が納得できない旨の説明を受けた。山梨県とのごたごたが続く中で「田代ダム案承認」を発表することは適切ではないと考えた静岡県は、発表を見送ることを決めた。

承認事項を忘れて思いつくまま話してしまう

当日の知事会見は、長崎知事との主張の食い違いなどが主なテーマとなり、記者の追及が続いた。厳しいやり取りの中で、田代ダム案を承認したことなど川勝知事の頭の中からすっかりと消えてしまったようだ。

最終的に、渡邉参事から知事の「間違い」を暴露される羽目に陥ったのだ。

県関係者によると、川勝知事は、このように承認事項を忘れてしまい、思うがまま発言してしまうことがしばしばあるという。記者たちも普通ならば、見過ごしていたのかもしれない。

ところが、田代ダム案はこれまで何度も知事会見の話題となり、川勝知事が都合よくごまかそうとしても、記者たちはちゃんと“事実”を承知していた。

結局、川勝知事が墓穴を掘る結果になった。

川勝知事はこの8月で御年75歳を迎え、後期高齢者の仲間入りをする。

今回のようなみっともない姿をさらしてしまったのを年齢だけのせいにするつもりはないが、「老害の人」と騒がれる前に、組織のトップとして後進の若手に道を譲るときが来たのだろう。

いまだに川勝知事は田代ダム案が水利権と関係あると思い込んでいるのかもしれない。だからこそ、渡邉参事は勇気を振り絞って、“裸の王様”である川勝知事に「間違い」を直言したのだろう。

田代ダム案協議開始のJR東海への通知内容とともに、「山梨県の調査ボーリングの中止要請」などと無謀な言い掛かりを続けるのをやめるよう、森副知事ら幹部は川勝知事にちゃんと伝えなければならない。

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