JR東海が進めるリニア中央新幹線について、静岡県の着工拒否が開業予定に大きな影響を与えている。ジャーナリストの小林一哉さんは「東海道新幹線の真上に位置する静岡空港に新駅を設置する議論を糸口にするしかない。静岡県への『地域振興』も尊重しなければリニア問題は解決に向かわない」という――。
川勝知事は東海道新幹線「静岡空港新駅」を求めている
6月9日公開のプレジデントオンライン「『地域振興の目玉』リニアを妨害されているのに…川勝知事に誰も『遅延行為をやめろ!』と怒れないワケ」では、リニア中央新幹線建設促進期成同盟会(以下、期成同盟会)に10番目のリニア沿線県として加入した静岡県の川勝平太知事のもくろみは「地域振興策」をJR東海に求めることだと明らかにした。
地元が求める地域振興策とは何か?
川勝知事をはじめ大井川流域の市町長らがJR東海に求める地域振興策とは、東海道新幹線の「静岡空港新駅」設置であることは間違いない。
5月31日、東京都内で開かれた期成同盟会総会で、山梨県の長崎幸太郎知事が、「国際空港である静岡空港だからこれまでにない画期的な新駅となる。広域にメリットが波及する」などと静岡空港新駅整備構想に言及し、川勝知事への“援護射撃”とも取れる発言をした。期成同盟会の研究会でその可能性を検討していくという。
JR東海は「条件が整わない」と拒否
新幹線新駅の設置で、日本経済発展の未来を担うインバウンド(訪日外国人)需要を取り込むのに最もふさわしい空港になるという発想である。
ところが、一日も早い南アルプスのリニアトンネル工事静岡工区の着工を目指すJR東海は、静岡空港新駅設置に対しては、「条件が整っていない。難しい」とするこれまでの姿勢を変えることなく、首を縦に振る可能性はいまのところ全くない。
こうなると、膠着するリニア問題はこれからも平行線をたどる可能性が高い。本稿では、解決の糸口となる静岡空港新駅にJR東海が強い拒否感を示す理由とともに、「反リニア」を貫いてきた川勝知事が、静岡空港新駅設置をなぜ求めているのかについてわかりやすく伝える。