ソニーは赤字なのにオリンパスへなぜ出資するのか

また今起こりつつある人員削減の特徴は、1つは中規模企業において早期退職者募集などの動きが活発化していることである。東京商工リサーチ調査でも報告されている事例としては、ホンダの子会社で、従業員2500人ほどのジャスダック上場企業八千代工業の700人規模の削減があり、そのほかにも2000人未満の企業で、全従業員の10~20%を対象とした早期退職制度などの募集は5月以降増えてきた。だが中堅企業が多いことで、逆にマスコミでの報道は多くはない。

またもう一つの特徴が、以前と比較して、若年層までが早期退職の呼びかけの対象となることが多いことである。例えば、ベスト電器のケースでは、35歳から対象とされたと報道されている。バブル経済崩壊期ほど注目をあつめてはいないが、業績不振の多くの中堅企業が、対象を若手にまで広げながら、人員削減を深く静かに進めているという印象である。

ただ、同時に注目すべき動きも起こっている。例えば、今話題のオリンパスの資本提携である。報道によれば、これを書いている時点では、資本提携先としてソニーが有力だそうである。パナソニック、富士フイルム、テルモなどとの競合の中で、ソニーが約500億円を出資して筆頭株主になる見込みだという。

私は、この報道を聞いて、少々あれっと思った。ソニーって赤字でリストラ中じゃなかったんだっけ? そして、よくよく聞いてみると、ソニー以前に有力視されていた企業の一つが、パナソニックだという。

12年3月期決算で、パナソニックの連結最終赤字は約7700億円、ソニーの連結最終赤字は約4500億円だった。そのためパナソニックは本社約7000人の中からかなり多くの人員を削減するリストラを計画しているといわれており、ソニーもグループ全体で1万人近くを削減する計画を発表している。ソニーにしても、パナソニックにしても、多額の赤字を出し、人員削減を進めていこうとする中での、大きな投資なのである。同様のことが、電気機器大手を中心に多くの企業で起こっている。

別に人員削減と大きな投資とを両方同時に実行するのが悪いといっているわけではない。経営の中でそうした決定をしなくてはならない場面も出てこよう。またオリンパスとソニーの場合は、資本提携だから、理屈ではソニー自体の雇用には影響しないはずであり、オリンパスの雇用を間接的に支えるのみである。