オリンピックに沸いたロンドンで、「LIBOR」の不正操作問題が世間を騒がせている。ロンドンの金融センターであるシティで活動する銀行、さらには当局の信頼性をも失墜させる可能性があると筆者は懸念する。
なぜゴルフは自己申告によってスコアを競うのか
ロンドンで第30回夏季オリンピックが開催された。ロンドンでのオリンピックの開催は、1908年、48年に次いで、64年ぶりの3回目である。7月27日(日本時間で7月28日)に開催された開会式に先立って、男女のサッカーの試合がその前々日と前日に行われた。日本女子サッカーはコベントリーでカナダに勝ち、日本男子サッカーはグラスゴーで優勝候補のスペインに勝ち、日本男女チームとも初戦を勝利で飾り、幸先のよいスタートを切った。サッカーをはじめ、多くの競技で日本選手に活躍してもらいたいと思うのは、筆者だけではないだろう。(※雑誌掲載当時)
言うまでもないが、スポーツで勝負および順位を決める判断の基準には2種類ある。一つは、サッカーや柔道のように1対1などで組み合って戦い、順位を決めるトーナメントである。もう一つは、陸上競技や水泳競技のように、時間やスピードなどを精密な計測機器で実測して、順位を決めるものである。体操競技のように、計測機器で実測できない技術点で順位が判断される競技については、中立的な審査員が点数を付けることによって、その点数によって順位が決められる。
いずれにせよ、実際に競技が行われ、その実際に行われた競技に対して何らかの形で優劣が表現されて、競技者たちの順位が決まる。優劣の決定において客観性と中立性を保証するために、精密な計測機器による実測や中立的な審査員によって評価されることが必要となる。オリンピックの競技になっていないが、ゴルフのように自己申告によってスコアを付けるスポーツは稀である。ゴルフは、イギリスが発祥であって、紳士のスポーツと言われている。英国紳士は虚偽の申請をしないはずだから、イギリス発祥のゴルフにおいては自己申告によってスコアを競い合うことになっているとも言われている。
そのロンドンから金融取引に関係するスキャンダルに関するニュースがロンドン・オリンピックの直前に流れてきた。そのスキャンダルに関するニュースは、イギリスのみならず、欧州全体さらにアメリカや日本などにも影響する可能性が懸念されている。そのスキャンダルは、LIBORスキャンダルと呼ばれている。
LIBORは、英語でLondon Inter-Bank Offered Rateの略語である。日本語ではロンドン銀行間取引金利と訳されている。しかし、London Inter-Bank Offered Rateの中の「提示された」という意味を持つ「Offered」という用語にこだわるのであれば、正確にはロンドン銀行間「提示」金利と訳したほうがいいであろう。LIBORスキャンダルは、この「Offered」(「提示された」)の用語に関わって起こった。