輸出向け高級車の生産が8割を占める日産の栃木工場。円高の影響をもろに受け、危機感を新たに納入業者を巻き込んだ効率化の改革、人材育成が始まった。
サプライヤーと互いに秘密をさらけ出す関係に
「自動車工場において、日本のものづくりは大きく変わっています。いや、変わらざるをえなくなっている。勝ち進むために」
日産自動車栃木工場(栃木県河内郡上三川町)の高岡洋海工場長は話す。
高岡は一般的な「生き残り」という表現は使わない。「勝ち進み」と栃木工場の社員やサプライヤー(納入業者)などの利害関係者に訴えている。
「残る立場じゃないんだ。俺たちは進むんだ」と。
日本のものづくりの、とりわけ国内で自動車を生産する環境は厳しい。1ドル90円を挟んで推移する円高、尾を引く金融不安、さらに先進諸国では自動車の販売不振にも見舞われている。
「こういうときこそ最終的には人です。モチベーションや達成感を抱きながら、個人がいかに仕事に取り組むかが重要です。私は、日産の社員だけではなくサプライヤーの社員も含め、スピードと行動力を求めます。スピードという点では、30%のデータの精度と情報で方向を決め、60%でやるかやらないかを決める。80%まで上がったなら実行に移し、走りながら100%から120%までやれと。工場内ではそう指示しています」
日産栃木工場は勝ち進むため、円高に対応する思い切った原価低減策に打って出ている。
具体的には、Tier1(一次取引先)を中心とするサプライヤーの工場入りだ。つまり、栃木工場の建屋内に生産設備を移設して、サプライヤーが生産活動を始めているのである。2008年秋の金融危機を機に一部で開始され、本格的には09年度から始まっている。対象は約50社だが、数社が工場入りしている。