日産の強みは、電池技術も自分たちで持っているという点。NECグループとの合弁会社、「オートモーティブエナジーサプライ(AESC)」(本社・神奈川県座間市)が、電池を生産している。

日産の首脳は「ライバルの自動車会社にも、全方位で電池を売っていく。日産車と競合するが、電池が売れるなら自動車の販売に影響してもかまわない」とさえ話す。

高岡は「(日産の)開発と購買が、電気系のサプライヤーを開拓しています。Tier2やTier3は栃木県内、あるいは北関東が有力となっていくでしょう」と話す。

新たな電気系サプライヤーも自動車生産という巨大なシステムに参画していく。電動化の流れのなかでは、従来のTier2がいきなりTier1に昇格することも、Tier1がやがてシステムから退場することも珍しくはなくなる。

ものづくりの環境が大きく変わるなかで、高岡は「もの言う栃木工場」を標榜している。川上である生産部門が、メッセージを発信するのである。

「円高でモノがつくれなくなれば、我々に将来はない。これまでのように従順で、与えられた条件のなかで精一杯やる生産部門では、今の危機をブレークスルーできないのです」(高岡)

もの言う生産部門として、今では販売面の支援も行っている。5段階の高技能者に当たる50代の工長OBを、販売会社に派遣。販社の経営テコ入れに役立てた事例もあるそうだ。

矢継ぎ早の変革と、自動車産業自体の変化のなかで、栃木工場が発する次なるメッセージを耳を澄ませて聞いてみたい。

(文中敬称略)

(ライヴ・アート=図版作成 相澤 正=撮影)