上下関係のない組織をまとめ上げられるのはどういう人か。元大阪市長の橋下徹さんは「リーダーシップを発揮するには仕事ができる人間であることに加えて、ウェットな人間関係も重要になる。安倍晋三元総理はもともとマネジメント・リーダーシップ力に長けているうえに、周りに菅さん、麻生さん、二階さんのように官僚グループや政治家グループをまとめられる人材がいたから、外交、安全保障の仕事に専念できた」という――。

※本稿は、橋下徹『日本再起動』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

公開演説
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自民党の強さは「まとめる力・まとまる力」

なぜ日本の野党は弱いままなのか。その答えは組織としての弱さにあります。

政治家は政策を語りますが、どんなに立派な政策を語ったとしても「組織の力」がなければ、政策は実行できず、単なる机上の空論で終わります。

つまり、政党は政策を実行するだけの組織力を持つ必要があります。

僕が大阪都構想を提唱したのも、大阪をよりよくするための政策を実行するには、しっかりとした役所の組織づくりが必要だと思ったからです。

大阪府庁と大阪市役所の統合・再編です。このような僕の考えに対して、「制度を変えても何も変わらない」という意見もありましたが、僕は大阪全体をよくする政策は、大阪府庁と大阪市役所の2つの役所組織に別れたままでは実行できないと考えました。

これは地方自治体の役所組織だけではなく、政党という組織も同じです。政治家それぞれが政策やビジョンを語ることも大切ですが、それを実行に移せるだけの政党の組織力が大事なのです。

組織力を強くする第一歩は、まずは自らの組織内にある異なる意見を1つにまとめることです。現在はバラバラに存在する野党が最終的には1つにまとまるために、まずは個別の野党が1つにまとまることが重要。

野党が自民党に選挙で勝利し、政権を奪取して自らの政策を強力に実行するために、この「まとめる力・まとまる力」が必要不可欠です。

自民党は、長い時間をかけ、数多くの経験を積み重ねながら「まとめる力・まとまる力」を蓄えてきました。だからこそ、たとえ党内の意見に大きな開きがあるときであっても、対立する意見をまとめ、党の統一した意見としてしまうだけの知恵を持っています。

どれだけ党内に激しい対立があったとしても、「決まったことには最後は従う」という不文律があり、決める過程において各メンバーの面子を保つ知恵と工夫がある。

ありとあらゆる人間関係を使って調整し、反対意見も尊重し、最終的には人間関係力をもった人間が組織をまとめる。それにとくに長けているのが自民党なのです。