「理念や政策よりも派閥の意向を優先すべきでない」
岸田文雄首相が最も恐れる政敵・菅義偉前首相が「岸田降ろし」の狼煙を上げたのは1月10日、訪問先のベトナムからだった。「理念や政策よりも派閥の意向を優先すべきでない。今は国民の声が政治に届きにくくなっている。歴代総理の多くは派閥を出て務めていた」と記者団に述べ、岸田派会長にとどまる首相をあけすけに批判したのである。
菅氏は同日発売の月刊誌『文藝春秋』のインタビューでも岸田政権について「派閥政治を引きずっているというメッセージになって、国民の見る目は厳しくなる」と指摘。国内外から同時に「岸田降ろし」の号砲を鳴らしたのだ。
岸田首相が欧米5カ国訪問に飛び立ち、国内を留守にした直後を見計らった奇襲だった。この日(日本時間)、岸田首相はパリでマクロン大統領と首脳会談・夕食会に臨んだ。そのころ、岸田首相が首相秘書官(政務)に抜擢した長男翔太郎氏は公用車でパリ市内の観光地を巡り、ビストロで気心の知れたスタッフと夕食を楽しんでいた(週刊新潮報道)。
岸田首相は就任1年を迎えた昨年10月4日、当時31歳だった翔太郎氏を首相秘書官(政務)に抜擢した。小泉純一郎内閣の飯島勲氏、安倍晋三内閣の今井尚哉氏ら政財官界に名を轟かせた大物秘書官が務めたポストである。
世論からは「縁故人事」「公私混同」と批判が沸騰。翔太郎氏が親しい民放女性記者に機密情報をリークしているとの報道が続き、岸田首相の「身内びいき」には政府内にも不信感が充満していた。
絶妙なタイミングだった「岸田降ろし」の狼煙
そのような悪評もどこ吹く風、翔太郎氏は父親に同行した欧米5カ国訪問でパリに続きロンドンでも公用車でビッグベンやバッキンガム宮殿を巡り、高級デパートハロッズでショッピング。ここで閣僚への土産としてアルマーニのネクタイなどを購入し、大西洋を渡った後はカナダでトルドー首相との記念撮影を執拗に求め、岸田父子と3人でカメラに収まったという。脇が甘いとしかいいようがない。