復権シナリオの鍵を握る公明党
これに待ったをかけたのが、菅氏に気脈を通じる萩生田政調会長である。萩生田氏は増税以外の財源を検討する党特命委員会を設置して自らトップに就き、今年夏には一定の方向性を打ち出すと表明した。党税調に先駆けて増税以外の財源を示すことで、増税撤回に追い込む算段だ。菅氏も歩調を合わせて増税への慎重姿勢を示している。
萩生田氏は幹事長ポストに意欲を示してきた。安倍派会長の座を西村康稔経産相や世耕弘成参院幹事長らと競い合っている。ここで菅氏に加担して「岸田降ろし」を成就させ、その功績で幹事長に就任すれば、安倍派会長の座も転がり込んでくるだろう。岸田首相さえ引きずり降ろせば、その後の総裁選は最大派閥・安倍派を中心とした「派閥の数」で制することができる。
鍵を握るのは公明党だと私はみている。昨年末は防衛増税に理解を示したものの今年はどう出るか。公明党はもともと岸田首相や麻生太郎副総裁ら主流派より、菅氏や二階俊博元幹事長ら反主流派とソリが合う。今年夏時点で「経済状況が悪化した」として増税慎重論に寝返り、菅氏や二階氏らと水面下で歩調を合わせて「岸田降ろし」を側面支援する展開は十分にあり得る。
延命したい岸田氏、主流派を切り崩す菅氏
増税包囲網ができつつあることを察したのか、岸田首相は1月30日の予算審議で萩生田氏の質問に対し「(防衛増税の)実施時期を柔軟に判断する」と弱含みに転じた。今年の税制改正での決着にこだわらず、来年以降にさらに先送りして「岸田降ろし」を封じる思惑がにじむ。いざとなれば「増税実施」より「政権延命」を優先させるつもりだろう。
今年夏以降の防衛増税政局を「岸田降ろし」の山場とみて、首相再登板を視野に主流派切り崩しを狙う菅氏。内閣支持率の下落もどこ吹く風、衆院解散権を封印し防衛増税を先送りしてでも24年秋の自民党総裁選まで政権に居座ることをもくろむ岸田首相。前首相と現首相の攻防が今年の政局の中心である。
安倍氏というキングメーカーが去った今、岸田首相の後ろ盾で財務省の後見人でもある麻生氏、ポスト岸田への野心を隠さない茂木敏充幹事長、菅氏と気脈を通じて安倍派会長の座を狙う萩生田氏、麻生派ながら菅氏と連携してポスト岸田を狙う河野氏ら、それぞれの思惑が複雑に交錯して視界不良の権力闘争が続く。