原発に防衛費…霞が関の思いが着実に実現している
「自ら解散さえしなければ3年間選挙はないのですから最強ですよ」と霞が関の幹部のひとりは冗談交じりに語る。
支持率の低下が続く岸田文雄内閣だが、首相がそれさえ気にしなければ何でもできる、というのだ。実際、経済産業省の懸案だった原子力発電所の稼働期限延長や新増設、財務省の懸案だった増税、党内右派が求めてきた防衛費の大幅増額などに次々と踏み切り、歴代内閣の中でも着実に「成果」を上げている。
「総理! 今は国民に理解されなくても、国家の先行きを考えた名宰相として歴史に名前が残りますよ」――。
岸田首相の耳元で、幹部官僚たちがそんな言葉をささやいているのではないかと思わせるほど、霞が関の思いが次々に実現している。
支持率の低下で、一時、岸田首相からは「孤独だ」という弱音が漏れたが、その後はなぜか自信を取り戻したかのように見える。それぐらい霞が関による「支え」を感じているのだろう。
「岸田降ろし」は不発に終わった
通常、ここまで内閣支持率が下がると、自民党内から政権批判が噴出するものだが、目立った「岸田降ろし」の動きは見えない。
防衛費の大幅増と財源としての増税について高市早苗経済安全保障担当相が12月上旬に「聞いてない」と発言し批判の声を上げたが、その流れは広がらず、岸田首相とも「手打ち」したと報じられた。
萩生田光一政調会長も12月25日のテレビ番組でこんな発言をした。
「いきなりの増税には反対で、もし増税を決めるのであれば、過去の政権がいずれもそうだったように、国民の信を問わなければならない。増税の明確な方向性が出た時には、いずれ国民に判断いただく必要が当然ある」
防衛費増額に伴う増税の前に、衆議院を解散して総選挙で国民の信を問う必要があると述べたのだ。
すぐさま首相の女房役である松野博一官房長官は「解散は首相の専権事項」だとかわし、それ以降、萩生田氏に同調する声は聞こえなくなった。
高市氏も萩生田氏も岸田首相が退陣した場合の「次」を狙っていると見られているが、「岸田降ろし」は不発に終わっている。