さらに東京地検特捜部が菅氏に追い打ちをかけるような事件が発覚した。安倍氏や菅氏と親しく、安倍・菅政権下で「マスコミの寵児」となった国際政治学者の三浦瑠麗氏の夫の投資会社への家宅捜索である。

三浦氏の夫の投資会社は、建設見込みのない太陽光発電事業への出資をもちかけ約10億円の出資金をだまし取ったとして刑事告訴されていた。三浦氏は自らが代表を務める「山猫総合研究所」のホームページで夫の会社が家宅捜索を受けたことを認め、「私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないこと」と説明した。

その後、①夫の投資会社と山猫総合研究所は同じビルのフロアにある、②三浦氏自身が対談本で夫の経営する会社の株を半分持っていると明かしていた、③テレビ番組に出演して太陽光発電を推す発言をしていた――ことが次々に報道され、「夫の会社経営には関与していない」という根拠が揺らいだ。

主戦場は、岸田首相が打ち上げた防衛増税

最大の焦点は、三浦氏が菅政権の成長戦略会議に有識者委員として起用され、太陽光発電をめぐり「規制の総点検に関する具体的な業界の要望」を提出していたことだ。

夫の事業を後押しする「利益誘導」との批判は免れず、菅政権の任命責任が浮上するのは避けられない。三浦氏は21年、神奈川県横須賀市であった防衛大学校の卒業式に菅首相と並んで登壇し祝辞を述べている。菅氏との親密な関係は隠しがたい。

岸田派関係者は「今後、特捜捜査の進展にともなって、菅氏と三浦氏の関係はますます注目されていく。東京五輪談合事件と併せて、検察が菅氏への牽制を強めているという構図です。菅氏が自らの首相再登板について『私はもうパスだ』と否定してみせたのは、検察をはじめとする風当たりをいったん弱める狙いがあるのではないでしょうか」と読み解く。

菅氏が「岸田降ろし」の山場とみる今年夏以降、政局はどう動くのか。主戦場となるのは、岸田首相が打ち上げた「防衛増税」だ。

見出しには「防衛財源」の文字が躍る
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米国が求める防衛力強化とミサイル購入に応じるため、岸田首相は昨年末、防衛費増額の財源を確保するための法人税・所得税・たばこ税の増税を表明した。しかし最大派閥・安倍派などが強く反発したため、増税実施は「24年以降の適切な時期」として23年の税制改正論議に先送りしたのである。

岸田派重鎮の宮沢洋一氏が会長を務める自民党税制調査会で議論を主導し、今年末の税制大綱で決定する――というのが岸田官邸と財務省が描いたシナリオだった。