派閥政治は本当に必要なのか。元大阪市長の橋下徹さんは「長い間派閥内外の権力闘争に揉まれることでボスとしての資質が育つ。派閥のボスが豊富に存在し、それをまとめるトップリーダーがいてこそ、党は強くなるから、派閥政治の存在は全否定できない」という――。

※本稿は、橋下徹『日本再起動』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

コンベンションセンターのビジネス担当者の大規模なグループ、3D生成された画像。
写真=iStock.com/gremlin
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「まとめ役」は派閥で揉まれて育つ

政治家は有権者から完全に任されていると自負し、自分の意見こそ絶対に正しいと確信して、自信満々で意思決定の場に乗り込んできます。

与党である自民党ではそうした人間が300、400人と集まるのですから、彼ら彼女ら全員の意見を聞いて1つにまとめることは困難です。

そこで登場するのが、人間関係力のある人物、いわゆる派閥のボスです。派閥のボスたちが党内をまとめるキーマンになっているのです。

政権与党の自民党は、派閥のボスたちが政治を動かしてきました。しかし、こうした人間関係力のある人間は一朝一夕で誕生するものではありません。

派閥のボスを育てる機能を果たしているのがまさに派閥なのです。派閥があるからこそ派閥のボスが生まれる。

派閥政治は否定的に見られることが多く、派閥解消が政治における重要テーマになったこともあります。派閥のなかで大金が動くこともあり、目の届かないところで、派閥のボスたちが物事を決める。

これが金権政治のもとになっているという批判の声は大きくなっていきました。有識者のみならず、一般の有権者からも政界がもつ諸悪の象徴のように思われたのです。かつての民主党も派閥解消を提唱していました。

しかし、批判の声が高まる中でも、僕はだんだんと派閥の重要性に気づいていきました。政界だけではなく、人が集まればグループが誕生するのが自然の摂理です。僕が所属する弁護士会も例外ではありません。

なぜ派閥が重要なのか。派閥ができれば当然派閥内での競争が起き、リーダーが生まれるからです。この場合、人間関係力がなければリーダーにはなれません。

したがって派閥のリーダーになるための競争はすなわち人間関係力競争ということになります。民間企業など一般的な組織の人事でリーダーに就くのとは訳が違います。

派閥のリーダーになったら、今度は派閥間の競争です。人間関係力を持った派閥のボスたち同士の争いです。ここで勝ち抜いた人物が自民党のリーダーになっていく。すさまじい人間関係力競争です。

政治の世界では、大臣などの役職者よりも、人間関係力を持った派閥のボスの方が強い。人間関係力が鍛えられた派閥のボスだからこそ、党内をまとめることができるのです。このような人材が豊富であることが、自民党の強さの所以ゆえんです。