何人に「うん」と言わせられるかがすべて
派閥のボスの資質とは、周りの人たちに「うん」と言わせることができることですが、それは裏切られるリスクを承知のうえで、派閥メンバーの面倒を細やかに見ることで備わるものです。
結局は、このような人間関係の貸し借りが、「この人に言われたらしかたがない」という空気を作り出すのです。
「面倒を見る」というのは言うは易し行うは難しです。僕にはまったくできません。
派閥メンバーの日々の小さな相談に乗る、困り事の解決に手を貸す、人脈づくりを助けることはもちろん、落選した派閥メンバーの生活を支援するなど、ありとあらゆる場面で協力を惜しまない、ということです。文字通り、公私にわたって面倒を見なければなりません。
「落選した派閥メンバーの面倒まで見るの?」と思ったかもしれませんが、派閥の存在感を保つためには、このようなことも必要なのです。
落選したからといって見捨てたら、そのメンバーは、次に当選したときに別の派閥に入るでしょう。何より「落ちたら見捨てられる」という派閥内での疑心暗鬼が、派閥の求心力を著しく低下させます。
だから、落選議員の家族も生活できるように年間数百万円の生活費を支援する。それが難しければ、知り合いの企業に頼んで、その落選議員と顧問契約を結んでもらうなど、何かしらのかたちで生活を支援する。
とりわけ政治家個人にお金が集まりにくくなった昨今、派閥のボスがメンバーに対するこうした面倒をどこまで見ることができるのか、それが派閥のボスの力の見せどころといってもいいでしょう。
清濁併せ呑み物事を進める親分肌
政治家というのは、ときには清濁併せ呑むことも必要なので、清廉潔白な優等生タイプよりも、もろもろ含んだうえで物事を進める親分肌の人物のほうが、派閥のボスに向いています。
極端な言い方をすれば、どれだけたくさんの子分をつくれるか、どれだけの人間にいうことを聞かせられるかが求められているということです。
そしてさらに、これらの派閥のボスたちをまとめなければならないのが、総裁、党首、代表という名のトップリーダーです。そのトップリーダーのまとめる力が党のまとまる力、すなわち強さに直結します。
派閥のボスが豊富に存在し、それをまとめるトップリーダーがいてこそ、党は強くなるのです。
このように派閥というコミュニティのメンバーとの間に強い絆を築き、まとめあげることができるような人間味あふれるリーダーには、当然、政治家に成りたてではなかなかなれません。
ボスとしての資質は、やはり長い間派閥内外の権力闘争に揉まれることで次第に育っていきます。僕が、派閥の存在を全否定できないのも、そこが政治家にとって必要な人間関係力を磨く場でもあると思うからです。