日本のデジタル化はどうすれば進むのか。元大阪市長の橋下徹さんは「憲法9条問題とデジタル政府が進まない問題の根っこは同じである。日本の法律はできることをリスト化する『ポジティブリスト方式』だが、有事の戦闘状態では禁止事項を列挙した『ネガティブリスト方式』が合理的だ。有事で何が起きるかを事前にすべて予測することは不可能である」という――。

※本稿は、橋下徹『日本再起動』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

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日本のDX化が一向に進まない理由

2021年の通常国会で菅政権の肝煎きもいりだった「デジタル改革関連法案」が成立し、同年9月にデジタル庁が設置されました。

ようやく行政と社会のデジタル化が本格的に動き出すということで、僕は、自民党デジタル社会推進本部の座長代理を務める平将明衆議院議員にインターネット番組に出演してもらい、デジタル発展途上国・日本の実情と行政のデジタル改革について議論しました。

そこで得た知見をもとに日本の前進を妨げているものの正体を論じていきましょう。

コロナ禍で行われた20年の国民1人10万円の一律給付金は、自治体から送られてきた用紙に支給希望者が手書きで個人情報と預貯金口座番号を書いて返送し、それを行政が確認してから世帯主の口座に入金される仕組みでした。

時間も手間もかかるやり方ですが、日本政府も自治体も国民個人の口座番号を把握していないので、こうするしかありませんでした。

これは、日本の政治行政が国民からの批判を恐れて、政府はできるだけ国民の個人情報を保有しない、他の個人情報とひもづけない、という方針でやってきた結果です。

その背景には、国・政府が集めた個人情報の流出が怖い、いろんな個人情報に国がアクセスできるようにするのは国に監視されているようで嫌だという、やや行きすぎた国民の不信感・不安感があると思います。

そのため、国民ひとりひとりの状況に応じて行政が支援する環境が整わず、コロナ禍では国民を救うための対応が完全に遅れました。

これによって誰の目にも明らかになったのは、日本のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化への対応の遅れでした。