小沢グループ50人が離党…民主党はなぜ分裂したのか

民主党は、政権与党だった2012年、消費税増税に賛成か反対かで党内がもめたとき、意見をまとめることができずに分裂しました。

このとき、増税に反対したのは、小沢一郎さんや鳩山由紀夫さんのグループなどで、増税に反対する議員が多かったのです。彼らの主張は民主党のマニフェストに反するというものでした。

このとき民主党は3日間にわたって合同会議を行いましたが、党内はまとまらず、政調会長だった前原誠司さんが一任取りつけをして強引に増税を決定してしまいました。当然怒号の嵐が起こり、賛成派と反対派でのもみあいが始まりました。

その結果、小沢グループの50人が離党し、民主党は政権を失うことになったのです。このとき、前原さんが多数決を採用していれば、少なくとも離党騒ぎは起こらなかったでしょう。

多数決で負けたから党を去るなどということは、政治家として何よりも恥ずべきことだからです。

前原さんには、「多数決では増税派が負ける」という判断があったのでしょう。もちろん、間違った意見が多数派を占める場合もあります。前原さんもそのように言っていました。

しかし、まとめる力を持たない政党、人間関係力を持った人間がいない政党の場合、最後は多数決で決めるしかありません。

もし、前原さんに増税は絶対にやらねばならないという信念があるならば、じっくりと議論を重ね、反対派を説得し、増税賛成派を増やす努力をしなければならなかったのです。

にもかかわらず、政調会長という役職を振りかざして、一任取りつけを行ったことは最悪の方法でした。一任取りつけができるのは、その人物が役職を持っているからではなく、人間関係力を持っているからなのです。

ですから、現在の野党の再生策を考える場合においても、もっとも大事なことは政治家の人間関係力の構築です。

政治家組織は「自分が一番」と思っている人々の集まり

同じ政治家でも知事や市長の場合は、役所組織において強力な人事権を持っているので、僕のようなタイプの人間でもリーダー役を務めることができました。

義理と人情に代表される人間関係を構築しなくても、最後はルールに基づいた人事権の行使によって組織をまとめることができます。

これが政治家組織になるとそうはいきません。基本的には皆が上下のない同列のメンバーで、「自分が一番」と思っている人々の集まりだからです。

リーダーシップを発揮するには仕事ができる人間であることが大前提ですが、それに加えて、ウェットな人間関係も重要になってきます。

この人に言われたら、少々理屈が合わなくてもついていこうと思わせるだけの人間関係力が必要なのです。仕事に集中することと、人間関係を築くこと。1人で両方兼ね備えるのが難しければ、分担してもいい。

その点、安倍晋三元総理はもともとマネジメント・リーダーシップ力に長けているうえに、周りに菅さん、麻生さん、二階さんのように官僚グループや政治家グループをまとめられる人材がいました。

ですから、安倍さんは外交、安全保障の仕事に専念して、国際社会において日本という国家の存在を際立たせる仕事ができたのでしょう。官僚組織や党内をまとめる役割は、菅さん、麻生さん、二階さんたちに任せました。